2008.07.01
手のとどく電子政府
asahi.com - 宅地3年連続上昇・地方横ばい「現在は下降」 路線価
http://www.asahi.com/national/update/0701/TKY200807010091.html

<路線価の公表は、昨年までは8月1日だったが、今年から1カ月早まった。これまでは路線価図などの冊子約2万6千冊を作製し、国税局や税務署に置いていたが、今年からインターネットでの閲覧のみとなり、製本や校閲などの作業量が減少。公表が前倒しされた>。

これはいい話。

今日発表された路線価は、今年から紙をやめてインターネットでの閲覧のみにした結果、1か月前倒しになったとのこと。制作や運送、保管などのコストもかなり削減されたに違いない。

こういう「公」の作業で、紙をやめてネットだけにすればコスト・労力が大きく削減できる、というものは山ほどあるはずだ。

申請とか手続きをネットでできるようにする、というのはなかなかヘヴィだけれども、こういう「情報公開」系のもの、調べて読むだけのものは、ネットで十分だろう。

これに似た話を以前、野口悠紀雄氏が書いていた。

ダイヤモンド・オンライン : 野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道 - せめて「ローテク電子政府」を作ってほしい
http://diamond.jp/series/noguchi/10009/

<こうしたハイテクサービスを日本でも提供してくれれば、もちろん理想的だ。しかし、それを望んでも、おいそれとは実現できない。第7回で述べたように、日本の「電子政府推進計画」では、「世界一便利で効率的な電子行政を実現する」としている。しかし、日本の電子政府の実態は、第7回、第8回で述べたように惨憺たるありさまだ。できもしない大目標を掲げて大見得を切り、実際には何も提供されていないのでは、「偽装」そのものである>。

<何もないよりは、ローテクサービスであっても提供して、現状をいくらかでも改善してくれるほうがずっとよい。確定申告書作成用ページは、それほど大掛かりな準備をしなくとも、提供できることだ。これは、「ローテクサービス」の典型例である。しかし、それが納税者を助けてくれるのは事実だ。「先ず隗より始めよ」は、まったく正しい。このようなサービスを徐々に広げてゆくことが重要である>。

これはまったく同感だ。

今回の路線価の場合、何かシステムを作ったわけではなく、「紙をやめる」という決断だけで、時間と費用を大幅に節約できた。利用者の利便性を高めたわけではないが、提供者側の「決断」だけで大きなコスト削減につながり、そのぶん別の行政サービスに人手・予算を回したりできる(そのぶん予算縮小・減税できればベター)。よって結局は、行政サービスの利用者にして納税者であるわたしたちのトクになっている。

先ず隗より始めよ」と似た言い回しで、「手のとどく果実(low-hanging fruits)」というのがある。こういう、わりとカンタンにできる「公」の電子化、「手のとどく電子政府」だけでも、かなりの効率化・コスト削減効果があると思う。

路線価の例は、ネットでも見れる仕組みがすでにあり、「紙をやめる」という決断だけでよかった。これは「電子化」というよりも、「仕事を減らす決断」という側面が大きかったかもしれない。いまの仕事や職を維持しようとする「雇用維持バイアス」を克服し、それをなくすという「決断」ができたわけだ。