2009.02.24
与謝野財務相「会社は株主のものという誤った考え」 市場経済の基本原理を否定しているように聞こえる
ロイター - 「会社は株主のもの」は誤った考え、私になじまない=財務相
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36649120090224

<与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は24日午前の衆院財務金融委員会で、「一時期、会社は株主のものという誤った考えが広まった。会社は株主のものという考え方は私にはなじまない」と語った。
 企業業績の悪化によって労働者の雇用環境が悪化しているにもかかわらず、企業が配当維持など株主を優先しているとの指摘に対しての発言。
 同相は「会社のステークホルダー(利害関係者)は株主だけでなく、従業員、経営者、お得意さま、下請けなど。株主はステークホルダーのうちの1人だ」と述べた。佐々木憲昭委員(共産)の質問に答えた>。
(2009年02月24日 12:22 JST)

前から与謝野氏はこういう人だったと思うが、それにしてもいまや日本の財務・金融・経済の最高責任者である人が、こんなマヌケなことを言っていていいのか。世界への恥さらしだし、ますます日本経済への信頼が下がる。

経済に対して決定力を持つトップの人間が、経済のメカニズムに対して間違った認識を持っているというのは、中川元大臣の酔っ払い会見などよりも根本的に重大な、マズイことだと思う。

会社は株主のものだし、株は会社の所有権だ。これは「誤った考え方」とか「なじまない」とかいう話ではない。これは法律であり、世界の常識だ。

そのうえで、「会社のステークホルダー(利害関係者)は株主だけでなく、従業員、経営者、お得意さま、下請けなど。株主はステークホルダーのうちの1人だ」というのはあたりまえだ。そんなことは株主はもちろん、誰でも知っている。できるだけすべてのステークホルダーを満足させることが、会社の維持・成長や、長期的な利益につながる。

株主というオーナーの利益と、ステークホルダーの利益は、ときに対立する場合もあるけれども、基本的には一致していないと、そもそも会社が持続しない。会社という「装置」は、ステークホルダー全員に利益をもたらすものだが、その所有権・最終的な決定権は株主にある。この所有権・決定権がはっきりしているからこそ、会社を存続しよう、発展させようという「インセンティブ」が生じるのであって、所有権とインセンティブこそ、市場経済の根本を支えるものだ。与謝野発言は、この市場経済の基本原理を否定しているように聞こえる。

法人税が世界一高い日本では、実は国・自治体こそ、会社にとって「最大のステークホルダー」だとも言える。会社はいくら稼いでも、半分くらい税金で持っていかれるのだ。日本は個人への所得税も、年収1200万くらいを境にはね上がり、住民税をあわせるとやはり半分くらいになる。この税率は世界4位で、ほとんど北欧レベルらしい。

NIKKEI NET - 日本の最高税率、世界4位の高さ 民間調査
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090202AT3S0901101022009.html

<日本の個人にかかる所得税などの最高税率が、世界各国の中で4番目に高い水準にあることが民間の調査でわかった。日本の所得税・住民税を合わせた最高税率は50%で、高福祉・高負担といわれるデンマーク、スウェーデンなどに次ぐ。政府は昨年末に消費税、所得税など税制の改革の道筋を示す「中期プログラム」を策定したが、税率に見合う社会保障などの充実を求める声も高まりそうだ。
 調査は大手会計事務所のKPMGインターナショナル(スイス)が世界87カ国を対象に実施した。2008年時点で日本より最高税率が高いのはデンマーク(59%)、スウェーデン(55%)、オランダ(52%)。そのほかの先進国もフランス(40%)など高い国が目立った>。

日本は、会社と高所得者に対して「五公五民」の国なのだ(健康保険、年金なども加えればそれ以上だろう)。いくら稼いでも税金で半分持って行かれるのだから、経営者・起業家・投資家がやる気を失うのも当然だ。

これだけ税金を取っておいて、国民にはロクに還元せず、ムダ使いばかりしているのが日本だ。その日本の財務・金融・経済の最高責任者である人が、おかしな発言でさらに株主を叩いているわけで、ふざけるのもいい加減にしろと言いたい。

日本では「労」「使」ともに、「民」はがんばっているのに、ちっとも浮かばれない。「政」の稚拙さ、「官」の肥大化こそ、最大の問題だ。高すぎる税金と多すぎる規制で、日本の経済発展を妨げているのは国だ。税金を安くして、規制を緩和し、民間のパワーを解放すれば、日本はまだまだ行ける。

日本国民は、いわば「日本という国の株主」なのだ。その株主を軽視して、ふざけた「経営」をやり、税金の「使い込み」をしているのが、いまの日本だ。むしろ「株主軽視」こそ問題なのだ。

与謝野氏のような「増税論者」が、冒頭の「株主軽視」発言をするというのは、まったくシャレになっていない。


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