2009.03.21
学校と会社のギャップ 学校でビジネスやマネーを教えてはどうか?
「学校では、企業が求める人材を育てられていない」といった話をしばしば聞く。

そもそも、企業が求める人材を育てる責任が学校側にあるのか、という話は置いておいて、学校が輩出する人材と、企業が求める人材にギャップがあることは間違いないように思う。

これはなぜなのか。

その理由はおそらく、「学ぶこと」と「ビジネス」のギャップにある。

学校とは「学ぶ」場所だ。学校では、生徒の側が「お客様」であり、授業料を払って、教育というサービスを買っている。学生は「お金を出して価値を買う側」なのだ。

これに対して、会社では給料をもらう。なぜ給料をもらえるかというと、働いて、会社に対して価値を提供するからだ。つまり社会人とは、「価値を提供して、お金をもらう側」だ。

なぜ会社が社員に給料を払えるかというと、会社は社員から提供されたさまざまな価値をとりまとめて、その会社の「売りもの」である価値として仕上げ、それを社会に対して提供し、お金をもらっているからだ。社員は、その会社という「装置」、システムの一部になる。

学校を出た人材が、会社に入って社会人になるということは、「お金を出して価値を買う側」から、「価値を提供して、お金をもらう側」になるということだ。つまり「買う側」から「売る側」に回るということだ。

これはなかなか大きな跳躍であり、マインドの変革が要求される。だから実際は、このことを理解するまでに、会社に入ってしばらくの時間を要する。中には、いつまで経ってもこのことがわからない人さえいる。

「売る」というのは、ほんとうに必要とされている価値を提供する、ということだ。ただ知識があるとか、スキルがあるとか、努力したとかは、問題にならない。世の中の人が「お金を出して買いたい」と思えるものを提供できるかどうか、それがすべてだ。

この「売る」ということが、「ビジネス」だ。これを学校では教えてくれない(ビジネススクールなどは別)。日本では、この「ビジネス」というものが、社会に価値を提供する堂々たる行為というよりも、何かいやらしいものであるかのように、毛嫌いされているところがある。

「お金」もそうだ。お金についても、人生が左右されるほど重要なものなのに、それに興味を持ったり、正面から取り組むことが何かいやらしいものと思われていて、学校でも教わらない。

学校でビジネスやお金について教えておらず、そのリテラシーがないまま社会に送り出している、ということが、実はけっこう大きいのではないか。これが学校と会社のあいだのギャップになっているだけでなく、日本人のビジネスリテラシー、マネーリテラシーの水準を下げてしまっていると思う。それで経営者や起業家になる人材が薄くなったり、誤った経済政策が広く支持されたりしている。

日本は世界第2位の経済大国になったけれども、それは戦時体制と同じく全体主義で一致団結してガムシャラに働いただけのことで、経済やビジネスについては何も理解していない、という気もする。20世紀後半ならそれでも良かったかもしれないが、21世紀にはもう通用しないだろう。

学校でビジネスやマネーについて教える、ということをやってみれば、きっと面白いことが起きる。ビジネスやマネーはすごく身近な話題だし、自分の利害に直結し、人生すら左右しかねないものなので、学生もきっと食いついてきて、楽しく学ぶだろう。


関連エントリ:
企業は「価値を生み出す装置」
http://mojix.org/2009/02/11/company_value_machine
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http://mojix.org/2008/08/01/company_university
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