2009.06.18
アンソニー・ギデンズ「急速に社会が変化している時代には、『仕事』を守るのではなく、『人』を守らなければならない」
NHKあすの日本 - 人への投資で将来に備える
http://www.nhk.or.jp/asupro-blog/020/20628.html

<今回のイギリス取材では、世界的にも著名な社会学者のアンソニー・ギデンズ氏にインタビューする機会に恵まれた。ギデンズ氏は、「急速に社会が変化している時代には、『仕事』を守るのではなく、『人』を守らなければならない」と、『人』に投資し職業能力を高めることの重要性を強調する。不況のいま、すぐには新たな仕事に就けないかも知れないが、次の景気回復に備えるべきだと言うのだ>。

<私たちが今回の番組で全国の35歳・1万人を対象に行ったアンケート。学校を卒業してから同じ会社に勤めている人は、わずか3人に1人という結果が明らかになった。35歳世代の大半はすでに転職を経験しているというわけだ。日本も転職を前提として、社会の仕組みを変えてこなければならなかったのに、現実に追いついていない。日本の雇用対策は、まだ『仕事』を守るという発想にとどまっているのではないだろうか>。

まったくその通りだ。ついにNHKレベルにまで、こういう正しい議論が出てくるようになった。

いわば「日本経済のガン」である解雇規制は、まさに「仕事を守る」アプローチだ。これがダメだという話がNHKレベルで出てくるようになれば、その弊害が一般人レベルにまで理解されるのも、そう遠くないかもしれない。

「仕事を守る」というのは、これまでの日本がやってきた、会社に雇用を強制してセーフティネットがわりにするというアプローチだ。これをやめて、解雇を自由にして雇用を流動化させ、セーフティネットを会社の外に作るのが「人を守る」アプローチだ。「仕事を守る」アプローチは、さまざまな弊害をもたらす上に、結局のところ「人を守る」こともできない

解雇規制に限らず、政府による「保護」や「バラマキ」にはかならずコストがあり、副作用がある。「タダめし」「フリーランチ」は絶対に存在しない。一見して「ありがたい」ように見えても、その背後で必ず「ありがたくない」ことが起きている。その「構造」を見抜く必要がある。

当面はきびしい経済状況が続きそうだが、これをきっかけに問題意識が高まり、正しい理解が広まって、「構造」を変える動きにつながっていくかもしれない。だとすれば、この苦しい状況は、むしろ日本にとってチャンスでもある。


関連:
アンソニー・ギデンズ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2..
フレキシキュリティ(解雇を規制せず、社会保障を重視する北欧の政策)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95..

関連エントリ:
解雇規制という「間違った正義」
http://mojix.org/2009/01/20/kaikokisei_wrong_justice
セーフティネットは会社の外に置き、「身分制度」をなくせ
http://mojix.org/2008/06/14/break_employment_hierarchy
解雇規制は「会社のセーフティネット化」だ
http://mojix.org/2008/06/05/safety_net_in_company