2009.07.27
イギリス労働党の「オールド・レイバー」と「ニュー・レイバー」
ウィキペディア - イギリス労働党の派閥
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4..

イギリスで保守党と二大政党を形成している労働党の派閥を解説。詳しくて面白い。

<労働党は、議員の間で自然発生的に誕生した保守党と異なり、議会外勢力である労働組合の連合によって誕生した政党であるため、結党以来常に複数の派閥が存在した。また、社会主義の解釈のレベルによる路線対立や、党の最終目標をどこに設定するかでも、常に論争があった>。

このへんの成り立ち、「ごった煮」ぶりは、日本の民主党にもちょっと似ている感じだ。

1980年代の終わり頃から、のちに首相になるトニー・ブレアら「モダナイザー」グループが党内で台頭し、「ニュー・レイバー」路線ができていく。

<1980年代の終わりから、党内にモダナイザーと呼ばれるグループが誕生した。彼らは、労働党の労組依存体質を改め、中産階級への支持拡大を目指すグループであり、派閥系譜的には、右派と穏健左派が結合して出来たグループである。これに対し、労働組合を重視し、国有化条項を固持しようとした従来からの左派を伝統主義者と呼ぶようになった。この両派の抗争は、トニー・ブレアらモダナイザーが党内での主導権を確立する1990年代中盤まで続いた。この抗争の結果、労働党は従来の労働者階級としての政党から大きく脱皮し、文字通り「ニューレイバー」(新しい労働党)へと変貌。1997年の総選挙で、念願の政権交代を果たした>。

古い「オールド・レイバー」と、新しい「ニュー・レイバー」を対比した表がおもしろい。



この「ニュー・レイバー」が政権をとり、ブレアが進めたのが「第三の道」路線である。

ウィキペディア - 第三の道
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC..

<第三の道(だいさんのみち、英語:The Third Way)とは、新自由主義的な経済路線の保守党政権に対抗するために、サッチャー(保守党の元首相)流の市場原理主義路線ではないもう一つの道を目指すべきとして、新自由主義的な経済路線を部分的に取り入れた社会民主主義の政治路線。イギリスの社会学者ギデンズなどによって主張され、主にヨーロッパ諸国の社会民主主義政党が取り入れた政治路線の総称。イギリス労働党のブレア政権(1997年5月2日 - 2007年6月27日)が最も有名である。社会民主主義であるが、立場上、かなり社会自由主義に近くなる>。

この「第三の道」は、できるだけ市場と社会参加に任せて、弱者に配慮しつつも、政府をムダに大きくしないというもので、個人的にもかなり共感できる路線だ。日本の民主党も、この「第三の道」くらい筋のいい政策を出してくれれば、支持したくなるのだが‥。

急速に社会が変化している時代には、『仕事』を守るのではなく、『人』を守らなければならない」と言ったのが、この「第三の道」の理論的支柱にもなったアンソニー・ギデンズである。解雇規制で「仕事を守る」ような政策は、上の比較でいうと「オールド・レイバー」みたいなものであり、イギリスでは労働党でさえ乗り越えてきている古い考え方なのだ。

以前「中小企業では解雇規制が有名無実になっているとして‥」というエントリでも書いたが、この「第三の道」や北欧のフレキシキュリティをはじめ、ヨーロッパでは中道左派ですら「市場」というものの意味をわかっているように感じられるのに対して、<日本は「左右」問わず、市場に介入する規制が大好きで、自由経済重視のはずの「右派」すら、ヨーロッパの中道左派もビックリの「大きな政府」論者だったりする>。

日本はまだ「モダナイズ」されておらず、「オールド・レイバー」みたいな発想が主流なのかもしれない。「反市場バイアス」がこれ以上ひどくならないことを願う。


関連:
ウィキペディア - 労働党 (イギリス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B4..

関連エントリ:
中小企業では解雇規制が有名無実になっているとして、それは中小企業と解雇規制のどちらが悪いのか?
http://mojix.org/2009/07/13/chuushou_kaikokisei
アンソニー・ギデンズ「急速に社会が変化している時代には、『仕事』を守るのではなく、『人』を守らなければならない」
http://mojix.org/2009/06/18/giddens_shigoto