2009.12.14
日本に寄付が少ないのは税制の問題 なんでもかんでも政府がやろうとしてもうまくいかない
asahi.com - 「この立石の商店街、元気あるよね」12日の鳩山首相(2009年12月12日21時0分)
http://www.asahi.com/special/09006/TKY200912120282.html

12日、鳩山総理が施設や商店街などを視察したそうだ。<総理が今日視察した4カ所の感想を。また、政府の税制調査会が中小企業への減税を見送る公算が高いが、この視察を中小企業や福祉施設など、政策にどう生かしていく考えか>という記者の質問に対して総理が回答しているが、その中に次のような部分がある。

<それから2番目のキャンナス、あの、看護師さんの方々がね、ボランティアでいいお仕事をされて、今まで公的な支援というのは介護がしっかりとやるんだけれども、公的な支援になかなか入らない生活支援のものがたくさんあるんです。そういう生活全般にわたる支援をしようとしても国の支援策がない。そこで、自分たちが手弁当でやらなきゃいけない。ある意味ではものすごくいい仕事をされているのにそういうところにうまく合うような支援策がないという思いを感じましたから、ここもしっかりとですね、私は手当をする必要があると思っております。ある意味で税制の問題で寄付税制を変えるということが大事かなと思いました。税金を国に納めるくらいならその一部をこういう暖かい施設のためにボランティアでがんばっている人たちのために支援しよう、そういうことをやってみたいと感じました>。

なんと、日本で寄付を増やすためには、税制を変える必要があるということに言及している。

鳩山首相、たまにはいいこと言う。日本に寄付が少ないのは税制の問題。まったくその通りだろう。

鳩山首相は経済オンチだとしても、「なんでもかんでも政府がやろうとしてもうまくいかない」ということはわかっているのかもしれない。

「なんでもかんでも政府がやろうとしてもうまくいかない」ということがわかるなら、政府が税金を集めて政府がやるよりも、そのぶん減税して、やる気のある民間人が自分でやるほうがうまくいく、という「小さな政府」の考え方に賛同すると思うのだが。

いわゆる左翼寄りの人は、こういうふうに「民間に任せる」という考え方、NPOやNGO、ボランティアなどの役割を重視するという考え方では、「小さな政府」の考え方に近い。鳩山首相もおおむねこの路線だろうし、派遣村湯浅誠氏などもそうかもしれない。

しかし左翼寄りの人は概して、資本主義や市場メカニズムを信頼しておらず、市場取引に規制をかけるべきだと考える。ここが「小さな政府」の考え方と違う。「小さな政府」論者は文字通り、政府はなるべく小さくして、民間の市場メカニズムに任せたほうがうまくいく、と考える。

「小さな政府」論者である私から見ると、弱者保護のために市場に規制をかけるべきだと考えている人の間違いは、<富や価値を生み出す「市場競争」と、弱者を救済する「セーフティネット」という別のものを混同している>ことだと思う。この混同によって規制が強くなり、経済は沈んでいく。その一方で政府は大きくなり、税金は高くなる。こういう考え方の人はおそらく、規制が「コスト(機会費用)」であるという意識が薄いのではないかと思う。税金という「見える」コストも重要だが、日本経済の足を引っぱっている真犯人は、規制という「見えない」コストのほうだ。


関連エントリ:
「派遣禁止なら正社員雇う」企業は14% 派遣禁止は「幸福が望ましいから不幸を禁止する」ようなもの
http://mojix.org/2009/12/09/haken_kinshi_seishain
「小さな政府」の考え方
http://mojix.org/2009/07/28/small_gov_thought
小さな政府、大きな市民社会がつくる「新しい公共」
http://mojix.org/2008/10/27/small_gov_big_civil_society