2010.04.09
「要するに日本はどうすべきなのか」を知りたい人は必読 池田信夫「日本が「本物の格差社会」になるのはこれからだ」
ニューズウィーク日本版 : エコノMIX異論正論 - 日本が「本物の格差社会」になるのはこれからだ(2010年04月08日(木)15時52分)
http://newsweekjapan.jp/column/ikeda/2010/04/post-160.php

<民主党が野党だったころ、「小泉改革のおかげで日本は格差社会になった」と自民党政権を批判するキャンペーンを張っていたが、最近はいわなくなった。民主党政権になっても、格差は縮小しないからだ>。

池田信夫氏の記事はいつも大体いいが、このニューズウィークのコラム氏のブログアゴラよりも一般向けで、平易でありながら密度が濃い。

特に今回はすごくいいと思う。要点がバッチリまとまっている。「要するに日本はどうすべきなのか」を知りたい人は、ぜひ読むべし。

後半の4パラグラフ(以下に引用)など、まさに完璧な内容だと思う。一字一句にいたるまで、すべて同感だ。

<このような「格差拡大」は、グローバルにみると先進国と新興国の「格差縮小」なので、必ずしも悪いことではなく、それを止める方法もない。したがって日本がこれに対応する方法は、二つしかない。新興国と競合しない知識集約的な産業を発展させることと、新興国と競合しない内需産業に労働人口を移動することである>。

<成長率を高める点では前者が重要だが、知識集約産業にはあまり雇用吸収力がない。日本の成長率が高まることが今後あまり期待できない以上、内需産業、特に福祉サービスの労働生産性を引き上げることによって、格差の問題にも対処することが賢明だろう>。

<総合研究開発機構(NIRA) は、このような方向で福祉政策を効率化する提言を3月に発表した。日本の福祉システムは、老年世代への給付が手厚く巨額の政府債務も将来世代の負担になるなど、世代間の不公平が大きい。また「終身雇用」などによって企業が福祉コストを負担してきたため、見かけ上は「高福祉・低負担」にみえるが、このようなシステムは企業収益の悪化によって維持できなくなってきた>。

<したがって現在の非効率な福祉システムを改め、年齢・地域・雇用形態・性別などに依存しないで低所得者を税で支援する「負の所得税」のような福祉システムが望ましい。日本の社会保障支出は、年間約30兆円に及ぶ。これだけの所得を合理的に再分配すれば、絶対的貧困を解決することは不可能ではない。必要なのは子ども手当のような無原則なバラマキではなく、福祉や税制の抜本改革である>。


関連:
池田信夫 blog - 「市場か、福祉か」を問い直す
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51394518.html
総合研究開発機構(NIRA) - 「市場か、福祉か」を問い直す―日本経済の展望は「リスクの社会化」で開く―
http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n100305_426.html

関連エントリ:
リチャード・カッツ「反成長的な慣行を社会的なセーフティネットと所得配分政策に置き換えよ」
http://mojix.org/2010/01/13/hanseichou_safetynet
斎藤精一郎「何故、超緩和策でデフレ脱却ができないのか」
http://mojix.org/2009/12/03/saito_kanwa
「自民は不満、民主は不安」 一時的なバラマキではなく、真の経済成長をもたらす規制改革を
http://mojix.org/2009/08/24/jimin_minshu_goumon