追い出し規制という「規制脳」で、弱者はますます苦しい立場に追い込まれる
asahi.com - 追い出し規制法案はまだか 民主迷走で宙に 被害続く(2011年1月6日3時2分)
http://www.asahi.com/national/update/0105/TKY201101050424.html
<家賃滞納者を強引に追い出す行為を禁じる「追い出し規制法案」が、たなざらしになっている。参院では与野党が法案成立を全会一致で可決したが、民主党の内紛や尖閣衝突ビデオ流出問題で衆院での審議は先送りされたまま。この間、被害はなお続き、法案に不満を持つ不動産業界からは、内容の修正を働きかける動きも出ている>。
「追い出し被害」というが、そもそも「家賃を払わない」のが原因なのだ。「被害」を受けているのはまず大家である。
ただでさえ、日本は借地借家法によって、賃借人の権利が強くなっている。このために入居時の審査がキツくなっていて、「属性弱者」は部屋を借りるのがむずかしい。
これ以上さらに賃借人の権利を強くすれば、「属性弱者」はいっそう部屋を借りられなくなって、ホームレスが増えるのではないか。
朝日新聞はおそらく、「規制を強めれば弱者が救われる」と考えて、こういう論調の記事を出しているのだろう。民主党・社民党・共産党なども大体この路線である。規制を増やせば増やすほど社会を改善できるというこの種の考え方を、私は「規制脳」と呼んでいる。
現実は、「規制脳」の人たちの思い通りにはいかない。むしろ逆だ。規制をさらに強めれば、入居時の審査がさらにキツくなって、弱者はより苦しい立場に追い込まれるだろう。
強者の手足を規制で縛っても、弱者がそのぶんラクになるわけではない。むしろ逆だ。強者の取引コストが上がれば、供給が過小になる。これによっていちばん困るのは、いちばん弱い者なのだ。
「市場」とはそういうものである。市場がそのように動くのは、それが「人間」でできているからだ。規制で人間を動かすことはできない。
弱者の保護・救済は、あくまでもセーフティネットでおこなうべきだ。格差の是正も、税制などによる再分配でおこなえばいい。これに対して、政府が市場取引に介入し、強者を規制で縛るという方式の制度設計は、じつに筋が悪い。借地借家法も解雇規制も、この種の「筋が悪い」悪法である。
私は弱者救済を否定しているのではない。強者を規制したり、市場取引を制約しても、それは「弱者救済」にはならない、と言いたいのだ。規制で市場取引を制約すると、経済が失速してしまう。現に、日本経済が失速しているのは規制によるところが大きい。
経済が失速すれば、弱者救済のセーフティネットを作る原資もなくなってしまうのだ。いまの日本はまさにこの状況だろう。
日本経済を失速させているのは、「規制脳」の人たちである。この人たちは経済を失速させているばかりでなく、弱者を救済するつもりで、むしろ弱者をいっそう苦しめているのだ。
関連エントリ:
セーフティネットは必要だが、市場を規制してもセーフティネットにはならない
http://mojix.org/2010/08/26/safety-net-and-market
滞納されても追い出せない 借地借家法の「罪」
http://mojix.org/2010/02/21/shakuchishakkahou_tsumi
「追い出し屋」が出てくるのは、そもそも家賃滞納という「食い逃げ」を許しているからだ
http://mojix.org/2009/05/13/oidashiya_kisei
日本の賃貸住宅ではなぜ保証人を要求されるのか 「保護」がむしろ「弱者」を生む日本の構造
http://mojix.org/2009/04/02/chintai_hoshounin
http://www.asahi.com/national/update/0105/TKY201101050424.html
<家賃滞納者を強引に追い出す行為を禁じる「追い出し規制法案」が、たなざらしになっている。参院では与野党が法案成立を全会一致で可決したが、民主党の内紛や尖閣衝突ビデオ流出問題で衆院での審議は先送りされたまま。この間、被害はなお続き、法案に不満を持つ不動産業界からは、内容の修正を働きかける動きも出ている>。
「追い出し被害」というが、そもそも「家賃を払わない」のが原因なのだ。「被害」を受けているのはまず大家である。
ただでさえ、日本は借地借家法によって、賃借人の権利が強くなっている。このために入居時の審査がキツくなっていて、「属性弱者」は部屋を借りるのがむずかしい。
これ以上さらに賃借人の権利を強くすれば、「属性弱者」はいっそう部屋を借りられなくなって、ホームレスが増えるのではないか。
朝日新聞はおそらく、「規制を強めれば弱者が救われる」と考えて、こういう論調の記事を出しているのだろう。民主党・社民党・共産党なども大体この路線である。規制を増やせば増やすほど社会を改善できるというこの種の考え方を、私は「規制脳」と呼んでいる。
現実は、「規制脳」の人たちの思い通りにはいかない。むしろ逆だ。規制をさらに強めれば、入居時の審査がさらにキツくなって、弱者はより苦しい立場に追い込まれるだろう。
強者の手足を規制で縛っても、弱者がそのぶんラクになるわけではない。むしろ逆だ。強者の取引コストが上がれば、供給が過小になる。これによっていちばん困るのは、いちばん弱い者なのだ。
「市場」とはそういうものである。市場がそのように動くのは、それが「人間」でできているからだ。規制で人間を動かすことはできない。
弱者の保護・救済は、あくまでもセーフティネットでおこなうべきだ。格差の是正も、税制などによる再分配でおこなえばいい。これに対して、政府が市場取引に介入し、強者を規制で縛るという方式の制度設計は、じつに筋が悪い。借地借家法も解雇規制も、この種の「筋が悪い」悪法である。
私は弱者救済を否定しているのではない。強者を規制したり、市場取引を制約しても、それは「弱者救済」にはならない、と言いたいのだ。規制で市場取引を制約すると、経済が失速してしまう。現に、日本経済が失速しているのは規制によるところが大きい。
経済が失速すれば、弱者救済のセーフティネットを作る原資もなくなってしまうのだ。いまの日本はまさにこの状況だろう。
日本経済を失速させているのは、「規制脳」の人たちである。この人たちは経済を失速させているばかりでなく、弱者を救済するつもりで、むしろ弱者をいっそう苦しめているのだ。
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