2011.01.26
新潟県と新潟市が合併する「新潟州」構想
新潟日報 - 県と新潟市が「新潟州」構想(2011年1月25日)
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/pref/19319.html


「新潟州(新潟都)」構想について共同会見で発表する泉田裕彦知事(右)と篠田昭新潟市長=25日午前11時30分ごろ、新潟市役所

<泉田裕彦知事と新潟市の篠田昭市長は25日午前、新潟市役所で共同会見を開き、県と政令指定都市である同市の合併による「新潟州」構想を発表した。今後、県内の合意形成を行うとともに県と市で合同の検討委員会を設置し、具体的な内容を詰めていく考え。県と政令市との二重行政を解消し、行政の効率化を図って市など基礎自治体の権限強化を目指す。ただ、実現には都道府県制などを敷く地方自治法の抜本改正が必要で、国への働き掛けを強めていく方針。
 両者は、国における地域主権改革の動きが停滞し、指定都市市長会の提案した政令市が県の役割も担う「特別自治市」の検討が進まないため、独自の地方再編案を検討することで一致>。

これは実に面白い動きだ。

しかし、「新潟県と新潟市が合併」とはどういうことなのか、ちょっとイメージしにくい。他のニュースも読んでみた。

47NEWS - 新潟県と新潟市が合併構想 二重行政解消
http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011012501000281.html

<新潟県の泉田裕彦知事と新潟市の篠田昭市長は25日、共同で記者会見し、県と市の二重行政の解消や自治体の権限強化を図ることを目的とした合併構想を発表した。新潟市を解体し、東京都のような特別区に再編することを目指すとしている。
 合併後の自治体の名称については「新潟州」を検討。同様の構想を提唱している大阪府や名古屋市などと連携し、国に地方自治法の改正などを通じた権限移譲を求める。
 国の出先機関の廃止など、民主党政権による地域主権改革の動きが停滞する中、受け皿となる自治体の在り方をめぐる議論をリードするのが狙い。
 会見で泉田知事は「(地域の)統治は国ではなく住民の意思で決めるべきだ」と構想の意義を訴えた。篠田市長は「(同様の構想を掲げる)ほかの地域と比べ、県と政令指定都市との仲は良好。協力して進めたい」と述べた>。

この記事には、「新潟市を解体し、東京都のような特別区に再編する」という言い回しがある。要するに、新潟市を解体して、東京23区のような特別区にするという構想らしい。

「同様の構想を提唱している大阪府や名古屋市などと連携し、国に地方自治法の改正などを通じた権限移譲を求める」ともある。これは面白い。

大阪府は橋下徹知事、名古屋市は河村たかし市長という名物首長がいるので、こういう新しい動きが出てきても不思議はない。しかし新潟というのは、個人的にはノーマークだった。新潟県の泉田裕彦知事は、まだ48歳と若く、支持率も高いとのこと。地域主権の新しいキーパーソンかもしれない。

日本経済新聞 - 新潟県・新潟市が合併構想 国に権限移譲求める(2011/1/25 13:15)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=969..

<新潟県の泉田裕彦知事と新潟市の篠田昭市長は25日、記者会見し県と市の合併構想を発表した。合併により県と市の二重行政の無駄を省き、自治体の権限を強化して地方分権の受け皿となり国に権限移譲を求める考えだ。
 新潟県と市は、東京都と特別区の関係を参考に新たな県と市の関係を設計する考え。合併後の名称は「新潟州」もしくは「新潟都」を検討している。州と州内の基礎自治体の権限配分は、州内で決められるように国に法改正を求める。県と市は今後、検討委員会を設置して構想を具体化する>。

これが具体化したら、道州制あるいは連邦制へ向けた大きな一歩になりそうだ。

<泉田知事は記者会見で「県民や議会の合意を得られるようにするとともに、同じ問題意識を持つ地域と連携していきたい」と話した。篠田市長は「地域主権改革が(民主党)政権の1丁目1番地であったにもかかわらず進んでいない」と独自に新潟州構想に動く理由を強調した>。

民主党政権の地域主権改革が進んでいない、というのはまったく同感だ。「当選確実なう」で知られる元ニセコ町長、逢坂誠二衆議院議員が地域主権改革の先導役だったはずだが(「北海道独立論その2: 1999年にイギリスから「独立」したスコットランドに学ぶ」参照)、逢坂氏はすでに内閣総理大臣補佐官を外れている。現在の民主党政権では、誰が地域主権改革を進めているのだろうか。

<地方行政のあり方を見直す動きを巡っては大阪や名古屋での「大阪都」や「中京都」構想がある。新潟の例も同様の動きだが、大阪や名古屋とは異なり、新潟では知事と市長が連携強化で合意しているため、さらに具体的な議論に進む可能性が大きいとみられる>。

「大阪都」や「中京都」、「新潟都」など、あちこちに「都」ができるのもヘンな感じがするので、名称はやはり「州」がいいと思う。日本を「州」に分割した上で、それぞれの「州」の中に「州都」がある、というのが自然だろう。

産経新聞では、この発表に対する大阪維新の会や日本経団連の反応を伝えている。

MSN産経ニュース - 橋下維新は評価、大阪府も「経緯知りたい」(2011.1.25 13:58)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110125/lcl11012513590037-n1.htm

<大阪府の橋下徹知事が代表を務め、大阪都構想を提唱している地域政党「大阪維新の会」の松井一郎幹事長は「全国にこれが広がれば、それだけでも巨額の財源が出てくる。日本の成長につながる」と評価。「民主党がいまやらなければならないのは行政の構造改革だ。これをやらなければ、増税なんて世間に受け入れられない。ただ、新潟の議会がどういう対応をするかが問題だろう」と語った>。

MSN産経ニュース - 地域主権には民意向上が不可欠 “新潟州”で経団連会長(2011.1.25 17:39)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110125/biz11012517410203-n1.htm

<日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)は25日、広島市内のホテルで中国経済連合会との意見交換後に記者会見し、新潟県の泉田裕彦知事と新潟市の篠田昭市長が同日、県と同市の合併による「新潟州」設立構想を発表したことについて「根底には地域主権がある。本年を平成の開国元年とするなら、(地域主権に向けた見直しも)大いに推進すべきだ」と理解を示した。
 ただ「経済3団体も道州制の実現をめざし国民会議を立ち上げて活動しているが、経済界と官側の意識に温度差がある」と指摘。「実際に実施するとなると首長や地方議会の数が減るので官側のインセンティブが働かない。実現には住民の意識をかきたてることが大事だ」と話し、「(地域主権で)どれだけ政治行政が改善され、住民の生活がどれだけ便利になるかを示すことが大事だ」と語った>。

なんにせよ、このような動きが地方から起きてきたのはとてもいいと思う。新潟もこの動きに加わったことで、地方分権・地域主権に関する国民の関心・理解もひろがりそうだ。

この動きが本格化してくれば、これによって権限を失う中央政府の抵抗も生じてくるだろう。そのあたりにも注意しながら、今後の動きに注目していきたい。


関連:
NHKニュース - 新潟 県市合併「新潟州」構想(1月25日 16時31分)
http://www.nhk.or.jp/news/html/20110125/t10013614671000.html
時事ドットコム - 権限強化目指し「州」に=新潟県・市が合併構想(2011/01/25-13:06)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011012500429
ウィキペディア - 特別区
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%8C%BA

関連エントリ:
中野雅至「決断ができないならば、日本を分割せよ」
http://mojix.org/2011/01/18/nakano-nihon-bunkatsu
日本も連邦制にすればいいのでは
http://mojix.org/2010/08/04/renpousei
大前研一による「道州制のビジネスモデル」
http://mojix.org/2008/06/23/ohmae_doushuusei