2011.02.13
週休3日制による内需拡大案 水曜が休みになったら何をする?
公務員を週休3日制にして、給料を2割下げるのはどうか」というエントリを先日書いたが、公務員に限らず、週休3日制というのは面白いテーマだと思う。

RIETI : 岩本真行 - 「週休3日制」導入による経済・社会変革を(2010年1月26日)
http://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0277.html

<週休2日制が導入されてから15年余りが経過した今、改めて週休日数の増加を検討すべき時期にきているのではないか。こうした問題意識に基づき、本稿では、経済および社会に変革をもたらすと考えられる「週休3日制」の導入について議論したい>。

1年ほど前に岩本真行氏によって書かれた記事。「経済のサービス化」「可処分時間の拡大」「ワーク・ライフ・バランス」といったキーワードを使って、週休3日制のメリットが手短にまとめられている。

以下、この記事からいくつか抜粋してみよう。

・公的資金に頼らない内需拡大策の必要性

<家計の可処分所得を底上げするための一方策として検討されている子育て手当などは、言うまでもなく公的資金に依存するものであり、公的資金に頼らずどのようにして長期的に内需を拡大していくのかという点については、いまだ具体策が出てきていないのが現状である。巨額な財政赤字を抱える我が国においては、公的資金に頼らない内需拡大策の検討が喫緊の課題である>。

・内需拡大のためには経済の「サービス化」が不可欠

<高度成長期以降、「工業立国」としての地位を築いてきたわが国の産業構造は、米国、英国などの欧米先進国に比べるとサービス産業の占めるシェアが小さい。すなわち、経済のサービス化が後れているのである。これは、裏を返せば、我が国は相対的にサービスの潜在需要を多く有しているということである。したがって、我が国の内需を拡大するためには、エコカー減税により自動車を購入させるなどのモノに着目した需要喚起策よりも、むしろ対個人サービスなど国民が潜在的に持つサービス需要を喚起するための政策に注力すべきなのである>。

・鍵となる概念は「可処分時間」

<可処分時間とは、労働などにより拘束される時間を除いた自由に使える時間のことを指す。わかりやすい言葉に言い換えれば「余暇」である。この可処分時間が多ければ多いほど、ヒトは趣味に時間を費やしたり、モノやサービスを消費するため、経済・社会活動の活性化につながるのである>。

・週休3日制の導入により可処分時間の拡大とワーク・ライフ・バランスの改善を

<現行の週休2日制では、5日間連続で勤務することとなるため、木曜日、金曜日あたりになると心身の疲労により労働生産性は低下してしまう。ところが、仮に水曜日を土、日に次ぐ第三の休日とすれば、連続勤務日数は2日間となり、心身ともにリフレッシュされた状態を保ちながら仕事することが可能となり、勤労意欲ひいては労働生産性の向上に寄与するだろう>。

<週休3日制の導入により、現在「ワーク」に偏っている我が国のWLBは「ライフ」にその重心を移し、公私のバランスに抜本的な変革がもたらされることとなる。さらに、国民のライフスタイルにも質的な変化がもたらされるだろう。今から15年前、週休2日制が導入された際にも、それまで不可能だった土日を利用した宿泊旅行が可能となるなど、国民の休日の過ごし方に変革がもたらされた。水曜日が第3の休日となったら、国民のライフスタイルはどのように変わるだろうか>。

・週休3日制を導入した国の例

<オランダは、世界で最もワークシェアリングが進んでいる国の例として取り上げられることが多い。オランダの雇用システムの特徴は、パートタイマーが多いことである。OECD統計によれば、オランダでは労働者の約3分の1がパートタイマーであり、それらのパートタイマーのうち多くが週休3日で働いている。このように、オランダでは週休3日で働くスタイルがある程度浸透しているのである>。

ざっとこのような内容だ。全体的に無理のない、妥当な見解だと思う。

「ワーク・ライフ・バランス」とか「ワークシェアリング」といったテーマは、政府のパターナリズムを助長する危険性もある。政府が国民に対して「もっと休みなさい」「もっとカネを使いなさい」「仕事量を制限しなさい」といったお説教・命令をして、それを法規制によって強制する、という流れにもなりかねない。そうであれば、私はもちろん賛同しない。

しかし強制によってではなく、週休3日制という選択肢を増やし、それをみずから選べるようなかたちになるのであれば、賛同できる。岩本氏が書いている、これによって日本のサービス産業が伸びて、内需が拡大するというシナリオは、私もおそらくその通りだろうと思う。

もし水曜が休みになったら、無理に「ワーク・ライフ・バランス」の「ライフ」をやらなくても、本業とは別の仕事をしてみたり、ボランティアをしたりしてもいいと思う。

個人的には、水曜が休みになれば、「勉強の日」にしたい。私の仕事はITだが、ITのような知識産業では、「知識」や「スキル」こそが商売道具である。しかし、この商売道具を磨く時間(勉強の時間)が、なかなか取れない。

サービス産業にもいろいろあるが、「学習」がらみのサービスというのは、まだまだ未開のフロンティアだと思う。知識産業が増えていて、潜在的な需要もかなりありそうなのに、「時間がない」というのがボトルネックになっている。「可処分時間」がないわけだ。

週休3日制になり、休みがもう1日増えたら、この「時間がない」というボトルネックが緩和されて、「学習」サービスが伸びるかもしれない。「学習」は単なる余暇ではなく、自分の知識やスキルへの投資なので、それが自分の成長にもなり、ひいては日本の成長にもつながるだろう。


関連エントリ:
公務員を週休3日制にして、給料を2割下げるのはどうか
http://mojix.org/2011/02/08/koumuin-shuukyuu-mikka
IT業界がいいのは、つねに勉強せざるをえないこと
http://mojix.org/2008/07/27/it_gyokai_advantage
ホビー経済
http://mojix.org/2005/12/13/090347