大阪維新の会「維新八策」 教育について
大阪維新の会「維新八策」について、資産課税、地方分権・道州制、財政・行政・政治改革、公務員改革と書いてきたが、今日は八策の4番目にあたる「教育」について書いてみたい。
まず、維新八策の「4.教育改革~世界水準の教育復活へ~」をあらためて見てみよう。
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4.教育改革~世界水準の教育復活へ~
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【理念・実現のための大きな枠組み】
・自立する国家、自立する地域を担う自立する個人を育てる
・基礎学力を底上げしグローバル人材を育成
・格差を世代間で固定化させないために、世界最高水準の教育を限りなく無償で提供する
・あしき平等・画一主義から脱却し、理解ができない子どもには徹底的にサポートし、理解できる子どもはぐんぐん伸ばす、個人の能力を真に伸ばす教育ヘ
・教育行政機関主導から生徒・保護者主導へ
【基本方針】
・文科省を頂点とするピラミッド型教育行政から地方分権型教育行政へ
・教育委員会制度の廃止(首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視)、教育行政制度について自治体の選択制
・生徒・保護者による公公間、公私間学校選択の保障
・選択のための学校情報開示の徹底
・公立学校長の権限の拡大・強化、校長公募など、学校マネジメントの確立
・学校を、学長・校長を長とする普通の組織にする
・国立大学長の権限拡大・強化、大学マネジメントの確立
・世界標準の英語教育と海外留学支援、最先端を行くICT教育環境
・教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機会を拡大するとともに教育機関の切磋琢磨を促す
・校長・教頭等の人材確保のための適正な給与、教諭の定期昇給は一定在職年数まで
・教員を雑務から解放し教育に専念させる
・教員は幅広い学部出身者と社会人から実力重視で採用
・障害者教育の充実
・大学入試改革を通じた教育改革
・高度人材養成機関としての大学院の質向上と選抜性強化
・大阪府・市の教育関連条例をさらに発展、法制化
・教職員労働組合の活動の総点検
教育改革というテーマは、重要であることは疑いないものの、維新八策のテーマの中では、優先度は低めだろうと私は考えている。内容的には、国がああしろこうしろと言う度合いを減らし、現場に自由にさせるという方向の政策は賛成だが、国の関与を強める方向の政策は反対である。
基本方針に並んでいるものでいうと、
・文科省を頂点とするピラミッド型教育行政から地方分権型教育行政へ
・教育委員会制度の廃止(首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視)、教育行政制度について自治体の選択制
・生徒・保護者による公公間、公私間学校選択の保障
・選択のための学校情報開示の徹底
・学校を、学長・校長を長とする普通の組織にする
・教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機会を拡大するとともに教育機関の切磋琢磨を促す
などは、賛成できる。ピラミッド構造をやめて地方分権型にしたり、自治体とその首長に自由と責任を持たせるなどは、維新八策の全体的な方向とも合致している。学校を「普通の組織にする」というのも、2番目の財政・行政・政治改革にある「役人が普通のビジネス感覚で仕事ができる環境の実現」というのと似ている。維新八策でいう「普通」とは、およそ「競争があたりまえで、身分保障もない民間」のような意味だろう。
この基本方針の中で個人的に特にいいと思うのは、「教育バウチャー(クーポン)」だ。教育バウチャーとは、生徒・家庭にクーポン(受講チケット)を配って、それを使ってどの学校に行くかは自由に選べるようにするものだ。
教育バウチャーは、生徒・家庭の側に対しては、一種の社会保障(セーフティネット)として機能する。「理念・実現のための大きな枠組み」のところに「格差を世代間で固定化させないために、世界最高水準の教育を限りなく無償で提供する」という一文があるが、世界最高水準かどうかはともかく、「格差を世代間で固定化させない」「限りなく無償で提供」という部分に対応しており、この意図を具体化するものだ。
いっぽうで、教育の供給側である学校に対しては、教育バウチャーは「競争」を促進する役割がある。その学校がどのくらい生徒・家庭に選ばれ、どのくらい必要とされているかは、教育バウチャーがどのくらい来ているかで、一目瞭然になる。維新八策では、「切磋琢磨(せっさたくま)」という表現がたびたび出てくるが、これは要するに「競争」である。自治体にも、公務員にも、民間では当然である「競争」を求めているが、これを学校にも求めているわけだ。
教育バウチャーは、生徒・家庭の側にパワーを与えて、学校選択の自由も確保しつつ、学校側には競争を求めて、成果を出している学校には見返りがある、という仕組みである。教育を供給する側の学校を一律に補助するよりも、予算をより効率的に使えて、より成果の出る仕組みと言えるだろう。
「理念・実現のための大きな枠組み」にある「あしき平等・画一主義から脱却」というのは、ぜひとも克服すべき課題である。自治体や学校の自由度を上げるだけでも、これはかなり進展するだろう。「あしき平等・画一主義」というのは、教育に限らず、いわば「日本の弱点」である(関連:「「主観恐怖症」の日本」)。これを人生で最初に叩き込まれるのが、学校という場所であることは間違いない。この点で学校を変えることができれば、それだけでも大きな前進だろう。
関連エントリ:
大阪維新の会「維新八策」最終案 これはまさに「維新」だ
http://mojix.org/2012/09/02/ishin-hassaku
飛び級、落第がない日本
http://mojix.org/2011/07/15/tobikyuu-rakudai
教科書が無味乾燥である理由
http://mojix.org/2010/11/20/kyoukasho-mumikansou
「主観恐怖症」の日本
http://mojix.org/2009/10/11/shukan_kyoufu
まず、維新八策の「4.教育改革~世界水準の教育復活へ~」をあらためて見てみよう。
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4.教育改革~世界水準の教育復活へ~
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【理念・実現のための大きな枠組み】
・自立する国家、自立する地域を担う自立する個人を育てる
・基礎学力を底上げしグローバル人材を育成
・格差を世代間で固定化させないために、世界最高水準の教育を限りなく無償で提供する
・あしき平等・画一主義から脱却し、理解ができない子どもには徹底的にサポートし、理解できる子どもはぐんぐん伸ばす、個人の能力を真に伸ばす教育ヘ
・教育行政機関主導から生徒・保護者主導へ
【基本方針】
・文科省を頂点とするピラミッド型教育行政から地方分権型教育行政へ
・教育委員会制度の廃止(首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視)、教育行政制度について自治体の選択制
・生徒・保護者による公公間、公私間学校選択の保障
・選択のための学校情報開示の徹底
・公立学校長の権限の拡大・強化、校長公募など、学校マネジメントの確立
・学校を、学長・校長を長とする普通の組織にする
・国立大学長の権限拡大・強化、大学マネジメントの確立
・世界標準の英語教育と海外留学支援、最先端を行くICT教育環境
・教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機会を拡大するとともに教育機関の切磋琢磨を促す
・校長・教頭等の人材確保のための適正な給与、教諭の定期昇給は一定在職年数まで
・教員を雑務から解放し教育に専念させる
・教員は幅広い学部出身者と社会人から実力重視で採用
・障害者教育の充実
・大学入試改革を通じた教育改革
・高度人材養成機関としての大学院の質向上と選抜性強化
・大阪府・市の教育関連条例をさらに発展、法制化
・教職員労働組合の活動の総点検
教育改革というテーマは、重要であることは疑いないものの、維新八策のテーマの中では、優先度は低めだろうと私は考えている。内容的には、国がああしろこうしろと言う度合いを減らし、現場に自由にさせるという方向の政策は賛成だが、国の関与を強める方向の政策は反対である。
基本方針に並んでいるものでいうと、
・文科省を頂点とするピラミッド型教育行政から地方分権型教育行政へ
・教育委員会制度の廃止(首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視)、教育行政制度について自治体の選択制
・生徒・保護者による公公間、公私間学校選択の保障
・選択のための学校情報開示の徹底
・学校を、学長・校長を長とする普通の組織にする
・教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機会を拡大するとともに教育機関の切磋琢磨を促す
などは、賛成できる。ピラミッド構造をやめて地方分権型にしたり、自治体とその首長に自由と責任を持たせるなどは、維新八策の全体的な方向とも合致している。学校を「普通の組織にする」というのも、2番目の財政・行政・政治改革にある「役人が普通のビジネス感覚で仕事ができる環境の実現」というのと似ている。維新八策でいう「普通」とは、およそ「競争があたりまえで、身分保障もない民間」のような意味だろう。
この基本方針の中で個人的に特にいいと思うのは、「教育バウチャー(クーポン)」だ。教育バウチャーとは、生徒・家庭にクーポン(受講チケット)を配って、それを使ってどの学校に行くかは自由に選べるようにするものだ。
教育バウチャーは、生徒・家庭の側に対しては、一種の社会保障(セーフティネット)として機能する。「理念・実現のための大きな枠組み」のところに「格差を世代間で固定化させないために、世界最高水準の教育を限りなく無償で提供する」という一文があるが、世界最高水準かどうかはともかく、「格差を世代間で固定化させない」「限りなく無償で提供」という部分に対応しており、この意図を具体化するものだ。
いっぽうで、教育の供給側である学校に対しては、教育バウチャーは「競争」を促進する役割がある。その学校がどのくらい生徒・家庭に選ばれ、どのくらい必要とされているかは、教育バウチャーがどのくらい来ているかで、一目瞭然になる。維新八策では、「切磋琢磨(せっさたくま)」という表現がたびたび出てくるが、これは要するに「競争」である。自治体にも、公務員にも、民間では当然である「競争」を求めているが、これを学校にも求めているわけだ。
教育バウチャーは、生徒・家庭の側にパワーを与えて、学校選択の自由も確保しつつ、学校側には競争を求めて、成果を出している学校には見返りがある、という仕組みである。教育を供給する側の学校を一律に補助するよりも、予算をより効率的に使えて、より成果の出る仕組みと言えるだろう。
「理念・実現のための大きな枠組み」にある「あしき平等・画一主義から脱却」というのは、ぜひとも克服すべき課題である。自治体や学校の自由度を上げるだけでも、これはかなり進展するだろう。「あしき平等・画一主義」というのは、教育に限らず、いわば「日本の弱点」である(関連:「「主観恐怖症」の日本」)。これを人生で最初に叩き込まれるのが、学校という場所であることは間違いない。この点で学校を変えることができれば、それだけでも大きな前進だろう。
関連エントリ:
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教科書が無味乾燥である理由
http://mojix.org/2010/11/20/kyoukasho-mumikansou
「主観恐怖症」の日本
http://mojix.org/2009/10/11/shukan_kyoufu