2012.12.25
グループ内派遣を直接雇用に 三井住友FG、法改正対応
朝日新聞デジタル - グループ内派遣を直接雇用に 三井住友FG、法改正対応(2012年12月24日23時46分)
http://www.asahi.com/business/update/1224/TKY201212240441.html

<三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、傘下の人材派遣会社から受け入れている派遣社員約1万人を、直接雇用に切り替える方針を明らかにした。グループ内派遣の規制を厳しくした改正労働者派遣法に対応する>。

<10月に施行された改正労働者派遣法は、人材派遣会社が系列企業へ派遣する割合を、全体の8割以下に制限した。こうした派遣会社は、主に大企業が人件費節約などを目的につくっていたが、本来は直接雇うべき人を、雇用が不安定な派遣社員として働かせていることが批判されていた>。

派遣はたしかに不安定である。派遣であれば、会社は契約を終了できるからだ。しかし、契約を終了できることは、市場ではあたりまえである。

正社員が安定しているのは、会社は正社員をなかなかクビにできないからだ。いったん契約したら、なかなか契約の終了ができない。これは、市場としては異常である。

日本企業が「本来は直接雇うべき人を、雇用が不安定な派遣社員として働かせている」理由は、日本では「本来はクビになるべき人でも、雇用が安定している正社員として雇いつづけなければいけない」からだ。正社員はいったん雇ったらなかなかクビにできないからこそ、採用もなかなかできない。

いまの日本は、解雇規制によって企業に雇用を強制し、企業をいわばセーフティネット化している。この仕組み自体が間違いなのだ。企業に雇用を強制するから、雇用のコストが上昇し、雇用が減って、雇用の流動性も失われてしまう。正規と非正規の雇用格差が生じるのも、これが原因である。

セーフティネットは必要だが、それは企業の外に作るべきなのだ。企業をセーフティネットがわりにするのをやめて、解雇を自由化すれば、雇用が増えて、雇用の流動性も増す。こうなれば、正規と非正規の雇用格差もなくなる。非正規という雇用形態の存在意義がなくなるからだ。正規と非正規の雇用格差というのは、いわば解雇規制が生み出した「身分制度」である。

雇用格差のように、一定の規模をもって生じている社会的な問題は、「ワルモノ」が引き起こしたものではなく、間違った制度や構造から生まれている。「ワルモノ」が原因ではないのだから、いくら「ワルモノ」を懲らしめても問題はなくならないし、むしろ問題が悪化しかねない。問題の解決に近づくには、いまの制度や構造を当然視せず、制度や構造そのものを問いなおす「制度論」の観点が必要である。


関連:
MSN産経ニュース - 大手2行、派遣事業撤退へ 法抵触の恐れ、1万8千人順次直接雇用(2012.12.24 11:30)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121224/biz12122411300004-n1.htm

関連エントリ:
解雇規制が正社員を「身分」にしている
http://mojix.org/2012/12/03/kaikokisei-mibun
「かんたんにクビにできる」ようにしたほうがうまくいく
http://mojix.org/2012/10/13/kantan-kubi