2013.03.22
「重版出来」は「じゅうはんでき」?
nelja - WJで「重版出来」に「じゅうはんでき」とルビが振られたことから、「でき」をめぐる考察に(2013.03.19)
http://nelja.jp/weekly-tl-topics/3114

<17日発売の週刊少年ジャンプ2013年16号で、「重版出来」に「じゅうはんでき」のルビが振られていたことがきっかけとなって、「重版出来」の読み方、慣例が一部で話題になった>。

<「重版出来」は「じゅうはんしゅったい」が本来の読み方。今回、週刊少年ジャンプの「クロス・マネジ」(KAITO)の冒頭で、「JC『クロス・マネジ』①巻、重版出来ッ!!」の文字に「でき」のルビが振られたことは、読者の間でも誤読ではないかと指摘されていた>。

本の広告で見かける、「重版出来」という文句。「じゅうはんしゅったい」が正しい読みだが、「出来」を「しゅったい」と読むのは、たしかにむずかしい。本の広告以外で、「出来」を「しゅったい」と読ませる場面はあまりないだろうから、ほとんど出版業界の専門用語に近いかもしれない。

<だが、一方で書店員のアカウントなどからは(「しゅったい」が正しいのは承知の上で)、取次や版元の書店営業の人間など含め、現場では「でき」と読む人がほとんどという報告もあり、「重版でき」は「正しくはないものの、現場レベルでは使われる読み」であるようだ>。

なんと、取次や版元など現場のプロも、「しゅったい」という正しい読みをもちろん知った上で、「でき」と読む人がけっこういるらしい。たしかに、「しゅったい」という音からは、「出来」という文字があまり浮かんでこない。「でき」という音であれば、「出来」がすぐに浮かんでくる。

<ただし、編集関係者となるとやはり「でき」は誤読として眉をひそめられるケースが多いようで、「しゅったい」が当たり前という反応が目に付いた。ただし、月刊!スピリッツで「重版出来!」という作品を連載中の松田奈緒子氏によると、「白泉社さんは「でき」」と読ませているそうで、版元によっても文化が異なっているようだ>。

<ともあれ、正式な読み方とは別に、通例的読み方が機能、定着している場所もある、不思議な用語であることが、改めてわかる一件だったといえるだろう>。

「でき」は誤読で、「しゅったい」が正しいことは知りつつも、「でき」のほうが便利なので、出版の現場でもわりと使われているわけだ。

言葉は使われてナンボなので、おそらく最終的には、便利な「でき」のほうが生き残っていくんじゃないかな。言葉の役割は意図を伝えることなので、意図がよく伝わるほうが「正しい」とも言える。


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