音楽CDはなくなるか?
asahi.com : 「1曲100円以下で」6割超す ネット音楽配信
http://www.asahi.com/business/update/0823/107.html
<市場が拡大するインターネット経由の音楽配信サービスについて、6割以上の人が1曲あたりの利用料は100円以下を望んでいる。調査サイト「iMiネット」を運営するライフメディア社のネットでの調査で明らかになった。現在は1曲150~200円が相場となっており、多くの人は割高だと感じているようだ。
今月9~14日に、10代以上の男女1854人から回答を得た。
音楽配信をいくらなら利用していいかを尋ねたところ、「51~100円」が35.2%で最も多く、続いて「50円以下」(30.5%)、「101~150円」(16.9%)だった。現在の値段に近い「151~200円」は5.7%にとどまった。
音楽CDの将来についての質問には、4割の人が「10年後以降も使われる」と答えた。ただ、3割が「10年後に使われなくなる」、2割が「5年後」、1割弱が「3年後」と、6割の人がCDは近い将来無くなると回答した>。
音楽のダウンロードは無料にしたほうがいいと考えている私にとって、1曲100円以下を望んでいる人が6割というのは、驚くべき結果ではない。
mF247やYahoo!の無料配信が注目を集めているのを見ても、そのうち100円どころか、無料でないと話にならない、と誰もが考えるようになると思う。
いっぽう、CDは近い将来(10年以内に)無くなると回答したのが「6割」というのは、私にとっては驚きの数字だ。
私がダウンロードを無料にすべしと考えるのは、音楽CDというものが残り、そこをビジネスにできるから、と考えてのものだ。CDがなくなるならば、ダウンロードを無料にできるはずがない。
とはいえ、音楽そのものは本来、物質と関係がない「データ」であることも事実だ。その点では、テキストや写真、動画、ソフトウェアなどと同様だろう。
以前書いた「iTMS-J、4日で100万曲販売突破 - 買っている人は、「何に」お金を払っているんだろうか」という私のエントリに対し、以下のような反応をもらった。
仮題 nikki : [雑感]iTMSとCDとで音楽を購入する違い
http://d.hatena.ne.jp/gobaku/20050810/1123669124
<私はiTMSの様な商売が軌道に乗ってしまえば逆にCDという形態での方が制約が多い分先細りになっていくのではないかと期待していたからだ。これまでのCDという形態では録音可能サイズに縛られていた発表形態が変われば、表現のしかたも変わってくると期待できるのではとぼんやりと考えていたからである>。
音楽を作る立場から見れば、これは完全に正しい。制約をいかにクリエイティヴに使うか、という面はあるにしても(俳句や短歌のように)、CDが制約であることは疑いない。
私がCDにこだわるのは、主にビジネスモデルとしての側面だ。つまり、事業者、アーティスト、顧客の全員がいちばんハッピーになるには、どういう仕組みがいいのか?という「ビジネスの設計」を考えたとき、CDは不可欠だと思うのだ。
ダウンロード自体を有料にするのではなく、「ダウンロードを無料にして、CDで稼ぐ」モデルがいいと私が思う理由は、以下のようなものだ。
・ 顧客側は、無料・暗号化なしのダウンロードを望んでいる(ナップスター以降の歴史が証明)(これをやるのがmF247)
・ 事業者にとっても、データに課金する仕組みは面倒で、コストがかかる
・ 課金をせず使用も自由にすれば、データはものすごい勢いで広まる(宣伝効果が高い)
・ 思い入れの強い層は、お金を出してもいいので、データ以上の付加価値(物質、ライブなど)を求める
・ 物質にお金を払うことには誰でも納得感がある
まとめれば、
「データと物質のそれぞれ得意なところを生かす」
「思い入れの強さに応じてお金を出してもらう」
といったところになるだろうか。つまり、
・ データは無料で、物質は有料で
・ 冷やかし客・ビギナー層は無料で、熱心な客・上級者・マニアは有料で
というのをビジネスモデルのベースにすると、話がうまく回る気がするのだ。
もうひとつ、ここに
・ 若者からはお金を取らない(<若者はお金は持っていないが、そのかわり情熱を持っている>)
というのも、つけ加えてもいい。
これまでは、全員に同じものを与え、全員から同じ金額を徴収するという「マス」的なモデルしかなかった。
「ダウンロードを無料にして、CDで稼ぐ」というモデルは、「まず情報を広める」「顧客を区別する」といった点で、ネット時代の「バズ」的な方法になっていると思うのだ。
これからは音楽も、ブログみたいになるんじゃないだろうか。音楽を作れる人は、どんどん無料で公開する。人気のあるクリエイターには、そのうちレコード会社から声がかかり、CDやライブ、DJなどで収益を得られるようになる。
ネットができるはるか以前から、レコード会社は音楽ライターにサンプル盤を配ってきたし、映画の配給会社は映画ライターに試写状を送り、出版社はメディアに新刊を献本してきた。情報を広めてくれる人には、無料で配ってきたのだ。
このブログ時代、いまや熱心なファンは、誰もが音楽ライター、映画ライターであり、「みんながメディア」状態だ。ヘタすると、紙にしか書いていない本職のライターよりも、すでにブロガーのほうが影響力があるのではないか。
レコード会社、出版社、配給会社は、このことに早く気づいたほうがいい。
アーティストの新曲をまっさきにダウンロードしたいと思うような熱心なファンは、ひと昔前の音楽ライターのようなものだ。その曲をブログや口コミで広めてくれるうえに、付加価値のある商品も買ってくれるだろう。
だから、ダウンロードは無料にしたほうがいい。
そして音楽CDは、やはり残ると思う。ただし、その「かたち」は変わっていくだろう。
ネットでは流せない、なんらかの付加価値をいっそう加えたかたちに、進化していくような気がする。
http://www.asahi.com/business/update/0823/107.html
<市場が拡大するインターネット経由の音楽配信サービスについて、6割以上の人が1曲あたりの利用料は100円以下を望んでいる。調査サイト「iMiネット」を運営するライフメディア社のネットでの調査で明らかになった。現在は1曲150~200円が相場となっており、多くの人は割高だと感じているようだ。
今月9~14日に、10代以上の男女1854人から回答を得た。
音楽配信をいくらなら利用していいかを尋ねたところ、「51~100円」が35.2%で最も多く、続いて「50円以下」(30.5%)、「101~150円」(16.9%)だった。現在の値段に近い「151~200円」は5.7%にとどまった。
音楽CDの将来についての質問には、4割の人が「10年後以降も使われる」と答えた。ただ、3割が「10年後に使われなくなる」、2割が「5年後」、1割弱が「3年後」と、6割の人がCDは近い将来無くなると回答した>。
音楽のダウンロードは無料にしたほうがいいと考えている私にとって、1曲100円以下を望んでいる人が6割というのは、驚くべき結果ではない。
mF247やYahoo!の無料配信が注目を集めているのを見ても、そのうち100円どころか、無料でないと話にならない、と誰もが考えるようになると思う。
いっぽう、CDは近い将来(10年以内に)無くなると回答したのが「6割」というのは、私にとっては驚きの数字だ。
私がダウンロードを無料にすべしと考えるのは、音楽CDというものが残り、そこをビジネスにできるから、と考えてのものだ。CDがなくなるならば、ダウンロードを無料にできるはずがない。
とはいえ、音楽そのものは本来、物質と関係がない「データ」であることも事実だ。その点では、テキストや写真、動画、ソフトウェアなどと同様だろう。
以前書いた「iTMS-J、4日で100万曲販売突破 - 買っている人は、「何に」お金を払っているんだろうか」という私のエントリに対し、以下のような反応をもらった。
仮題 nikki : [雑感]iTMSとCDとで音楽を購入する違い
http://d.hatena.ne.jp/gobaku/20050810/1123669124
<私はiTMSの様な商売が軌道に乗ってしまえば逆にCDという形態での方が制約が多い分先細りになっていくのではないかと期待していたからだ。これまでのCDという形態では録音可能サイズに縛られていた発表形態が変われば、表現のしかたも変わってくると期待できるのではとぼんやりと考えていたからである>。
音楽を作る立場から見れば、これは完全に正しい。制約をいかにクリエイティヴに使うか、という面はあるにしても(俳句や短歌のように)、CDが制約であることは疑いない。
私がCDにこだわるのは、主にビジネスモデルとしての側面だ。つまり、事業者、アーティスト、顧客の全員がいちばんハッピーになるには、どういう仕組みがいいのか?という「ビジネスの設計」を考えたとき、CDは不可欠だと思うのだ。
ダウンロード自体を有料にするのではなく、「ダウンロードを無料にして、CDで稼ぐ」モデルがいいと私が思う理由は、以下のようなものだ。
・ 顧客側は、無料・暗号化なしのダウンロードを望んでいる(ナップスター以降の歴史が証明)(これをやるのがmF247)
・ 事業者にとっても、データに課金する仕組みは面倒で、コストがかかる
・ 課金をせず使用も自由にすれば、データはものすごい勢いで広まる(宣伝効果が高い)
・ 思い入れの強い層は、お金を出してもいいので、データ以上の付加価値(物質、ライブなど)を求める
・ 物質にお金を払うことには誰でも納得感がある
まとめれば、
「データと物質のそれぞれ得意なところを生かす」
「思い入れの強さに応じてお金を出してもらう」
といったところになるだろうか。つまり、
・ データは無料で、物質は有料で
・ 冷やかし客・ビギナー層は無料で、熱心な客・上級者・マニアは有料で
というのをビジネスモデルのベースにすると、話がうまく回る気がするのだ。
もうひとつ、ここに
・ 若者からはお金を取らない(<若者はお金は持っていないが、そのかわり情熱を持っている>)
というのも、つけ加えてもいい。
これまでは、全員に同じものを与え、全員から同じ金額を徴収するという「マス」的なモデルしかなかった。
「ダウンロードを無料にして、CDで稼ぐ」というモデルは、「まず情報を広める」「顧客を区別する」といった点で、ネット時代の「バズ」的な方法になっていると思うのだ。
これからは音楽も、ブログみたいになるんじゃないだろうか。音楽を作れる人は、どんどん無料で公開する。人気のあるクリエイターには、そのうちレコード会社から声がかかり、CDやライブ、DJなどで収益を得られるようになる。
ネットができるはるか以前から、レコード会社は音楽ライターにサンプル盤を配ってきたし、映画の配給会社は映画ライターに試写状を送り、出版社はメディアに新刊を献本してきた。情報を広めてくれる人には、無料で配ってきたのだ。
このブログ時代、いまや熱心なファンは、誰もが音楽ライター、映画ライターであり、「みんながメディア」状態だ。ヘタすると、紙にしか書いていない本職のライターよりも、すでにブロガーのほうが影響力があるのではないか。
レコード会社、出版社、配給会社は、このことに早く気づいたほうがいい。
アーティストの新曲をまっさきにダウンロードしたいと思うような熱心なファンは、ひと昔前の音楽ライターのようなものだ。その曲をブログや口コミで広めてくれるうえに、付加価値のある商品も買ってくれるだろう。
だから、ダウンロードは無料にしたほうがいい。
そして音楽CDは、やはり残ると思う。ただし、その「かたち」は変わっていくだろう。
ネットでは流せない、なんらかの付加価値をいっそう加えたかたちに、進化していくような気がする。