2009.03.07
ホリエモンを「自覚せざるリバタリアン」と喝破していた、宮崎哲弥「堀江氏出馬と保守の変成」(2005年)
ホリエモンが出馬した2005年8月、宮崎哲弥氏が産経新聞に寄せた、「堀江氏出馬と保守の変成」という一文を知った。

書く/読む/喋る/考える - ホリエモン出馬!!――新自由主義への熱烈賛歌
http://blog.goo.ne.jp/wordblow/e/95a860466ada810a172ae931e9260c23

このブログで、その全文が紹介されている。2005年8月21日、産経新聞16面の【断】に掲載されたもののようで、以下がその全文だ。

<ライブドア社長、堀江貴文氏が、反郵政民営化・反小泉自民党の総大将、亀井静香氏の地元、広島6区から出馬することが決まった。
 当面無所属とはいえ、対抗馬を立てない確約を得、かつ追加公認の含みを残した事実上の小泉自民党の候補者だ。
 この「究極の刺客」に関して語るべきことはいろいろあるが、最も深いレベルの指摘をしておきたい。
 自民党は郵政造反組を排除することによって、その軸足を新自由主義の方向に大きく移動させた。伝統的な社会共同体重視の保守主義から、アメリカ共和党的な個人の自律と市場競争を最重視する社会哲学にシフトしたといってよい。
 これが小泉自民党の政策思想的「純化」の意味である。この保守政治の変成に気付いている人は驚くほど少ない。
 ホリエモン出馬はかかる勢力変動と無関係ではない。私は以前から堀江貴文氏こそが日本におけるリバタリアリズムの象徴的存在であると示唆してきた。
 リバタリアニズムとは、新自由主義をさらにラジカルにした、国家権力を最小化し、社会の粗方(あらかた)の機能を自由市場のメカニズムに委ねようという思想だ。アメリカにおける保守主義の最右翼の一つと考えられており、日本では「自由至上主義」などと訳される。
 堀江氏の一連の言動を見れば、彼が自覚せざるリバタリアンであることは明らかだ。
 新自由主義に「純化」された小泉自民党は、遂に自由至上主義者にまでウイングを拡げた。この政治的、思想的意味は限りなく大きい。
 日本の保守の転機である。(評論家・宮崎哲弥)>

郵政造反組を排除した小泉自民党が、<伝統的な社会共同体重視の保守主義>から<アメリカ共和党的な個人の自律と市場競争を最重視する社会哲学>にシフトし、軸足を新自由主義に移動させたことで、<保守政治の変成>が起きたと指摘。

いっぽうホリエモンは<自覚せざるリバタリアン>であり、リバタリアニズム(自由至上主義)とは<国家権力を最小化し、社会の粗方(あらかた)の機能を自由市場のメカニズムに委ねようという思想>である。小泉自民党がそのホリエモンを支持したことは、<新自由主義に「純化」された小泉自民党>が<自由至上主義者にまでウイングを拡げた>ことを意味しており、<この政治的、思想的意味は限りなく大きい>としている。

実に切れ味のいい見事な内容で、宮崎氏の当時の興奮が伝わってくるようだ。

その後、自民党は小泉路線から<伝統的な社会共同体重視の保守主義>にまた戻りつつあり、新自由主義路線は後退した。日本の保守は<転機>まで達したものの、けっきょく変化を遂げられず、元に戻りつつあるわけだ。

小泉自民党やホリエモンに象徴される「新しい日本」が、一時は若者を中心に大きな支持を集めて、日本経済も復活しつつあった。しかし小泉自民党の構造改革路線は中断させられ、ホリエモンもいわば「追放」された。その後の金融危機を経て、政治はまた「古い日本」に戻りつつあり、経済も墜落して、いまだに底が見えない。いまや政治に対する国民の期待感・信頼感はほとんどゼロに近い。

しかし、小泉自民党やホリエモンが吹き込んだ「新しい日本」の精神は、国民のあいだに確実に広まった。その功罪はあるにせよ、ただ「古い日本」に戻ればいいと考えている日本人は、いまや少数だろう。だからこそ、「古い日本」に戻ろうとするだけのいまの政治が、まったく支持されていないのだ。


関連エントリ:
ホリエモンはリバタリアンか?
http://mojix.org/2009/03/04/horie_libertarian
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http://mojix.org/2009/02/08/capitalism_maturity
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http://mojix.org/2006/01/23/231712
自民党公認でホリエモン「出馬」
http://mojix.org/2005/08/17/155444
日本のブログ界にも政治ブームか / ホリエモンと小泉純一郎 / 政治広報戦略も「マス」から「バズ」へ
http://mojix.org/2005/08/10/114907