2010.06.25
菅首相が日産ゴーン社長を「首切り上手」と批判 政府にはむしろ「首切り上手」が必要だ
J-CASTニュース - 菅首相 日産ゴーン社長を「首切り上手」と批判(2010/6/21 17:20)
http://www.j-cast.com/2010/06/21069238.html

<菅直人首相は2010年6月19日のさいたま市内での街頭演説で、日産自動車のカルロス・ゴーン社長の給料が高いのは「首切りがうまかったからだ」と述べた。また、「すべての会社で首切りした社長が偉いなら日本中に失業者が溢れてしまう。国民全体を考えたら、リストラする経営者ほど立派というのは大間違いだ」と、成長戦略を説明する中で批判した>。

池田信夫氏も書いていたが、この菅首相の発言はほんとうにひどい。

首相になれば多少認識が変わるかとやや期待したが、「資本主義の暴走を許す小泉改革路線は大きな間違いだった」とか言っていた頃から、まったく変わっていないようだ。国のトップがこんな認識を持っており、それを演説で得意げに話しているなんて、私が格付け会社であれば、それだけで日本の格付けを下げたくなる。

「首切り」が好きな経営者などいない。そうしないと会社がつぶれるから、仕方なくやるのだ。民間企業はすべてそうである。

日本の政治がもっとマシであれば、経済ももっといいはずなのだ。例えば法人税がいまの半分なら、日経平均はすぐに倍くらいになるだろう。経済が好調であれば、わざわざ「首切り」などしなくてもいいのだ。つまり、民間企業が「首切り」に追い込まれる原因の少なからぬ部分は、政府の「悪政」なのである。

「首切り」の少なからぬ原因を生み出している政府が、仕方なく「首切り」する民間企業を責めるとは、話がアベコベだ。なぜ民間企業が「首切り」しなければならないほど経済が悪いのか、政府はむしろ反省すべき立場にある。

こんな認識の菅首相が言う「成長戦略」など、成長戦略でも何でもない。「増税でデフレ解決」などと言って、取った税金を「第三の道」で結局は恣意的にバラまくわけだから、むしろ「反成長戦略」そのものだ。真の成長戦略は、(1)減税して、(2)バラマキやムダ遣いなど余計なことを一切やめて、(3)規制緩和すること、この3つ以外にない。

むしろ政府こそ、「首切り上手」を見習うべきなのだ。政府は市場原理にさらされておらず、ただでさえ「倒産」がないうえに、ムダな人員がいても、基本的に「首切り」というものがない。これでは、政府というものはどんどん肥大化していく一方である。どんな民間企業にも増して、政府こそ最も「リストラ」が必要な組織なのだ。

規制や税金を強制できる政府が、何も強制できない民間企業を責めるなんて、まったくアベコベだし、許しがたい。それも、日産はJALのように国に救ってもらったわけでもなく、自力で生き残った企業なのだ。政府は日産の経営努力や効率性をむしろ見習うべきであり、責めるなんてもってのほかだ。

報酬を100億円くらい出してもいいから、むしろ日産のゴーン社長に、日本の総理大臣をやってもらいたいと思う。「首切り上手」なゴーン社長に、政府のムダをバンバン切ってもらいたいものだ。


関連エントリ:
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