2010.08.27
小沢一郎氏が民主党代表選に出馬 これで民主党分裂は確定、小沢総理誕生か?
小沢一郎氏が民主党代表選に出馬した。先日「ぜひ出馬してもらいたい」と書いた私だが、ほんとうに出馬するとは思っていなかった。私と同じく、出馬しないと思っていた人がやはり多かったようで、驚きの声がひろがっている。

菅氏側につくかのように報じられていた鳩山元総理が小沢氏支持に回り、これで小沢氏は出馬を決心したらしい。ずっと黒幕だった小沢氏だが、人生の最後に自ら立つ決意をしたのだろう。

この小沢氏出馬により、菅氏と小沢氏のどちらが勝っても、少なくとも民主党分裂は確定だろう。これは間違いなく日本の政界再編につながるので、グッドニュースだ。私は特に小沢氏を支持しているわけではないが、民主党はきちんと分裂したほうがいいと思っているので、小沢氏の出馬を歓迎する。

議員票からいうと小沢氏側が有利だそうで、小沢総理誕生の可能性も高まってきた。これは面白い。

以下、asahi.comから関連するニュースを時系列にいくつか拾ってみた。

asahi.com - 小沢氏、民主党代表選出馬の方向 26日にも表明へ(2010年8月26日3時1分)
http://www.asahi.com/politics/update/0826/TKY201008250519.html


民主党の国会議員らから出馬要請を受け、笑顔の小沢一郎前幹事長(中央)=25日夕、東京・永田町、細川卓撮影

<民主党の小沢一郎前幹事長は25日、9月の党代表選に立候補する方向で最終調整に入った。早ければ26日にも表明する。菅直人首相が「脱小沢」路線から転換する見通しがなく、挙党態勢を目指した鳩山由紀夫前首相の仲介も不調に終わったことを踏まえて判断した。党内最大勢力を率いる小沢氏が首相と対決すれば、党を二分する激しい選挙戦となるのは必至だ>。

<小沢氏は24日夜、鳩山氏と会談した際、出馬回避の条件として、仙谷由人官房長官らの更迭を含めた「脱小沢」路線の撤回を求めたとされる。小沢氏としては、鳩山氏の調整が不調に終わったことで、菅首相が挙党態勢を構築する可能性はないと判断し、立候補する方向になった>。

<小沢氏は、7月の参院選で消費増税を打ち出し、昨年の衆院選マニフェストを修正した菅首相に対する批判的な発言を続けてきた。米軍普天間飛行場の移設問題でも沖縄県内への移設を決めた日米合意を批判しており、代表選では、消費税と普天間問題を争点に掲げる構えだ>。

asahi.com - 小沢氏「不肖の身であるが出馬決意」 民主代表選(2010年8月26日11時0分)
http://www.asahi.com/politics/update/0826/TKY201008260095.html


鳩山由紀夫前首相との会談を終え、出馬を表明する民主党の小沢一郎前幹事長=26日午前8時23分、東京都港区、金子淳撮影

<民主党の小沢一郎前幹事長が26日朝、鳩山由紀夫前首相と会談後に記者団に語った内容は、以下の通り。
 「今、鳩山総理と、前総理とお話をして参りました。鳩山総理からは、前総理からは『お前が代表選に出馬を決断をするならば、自分としては全面的に協力し、支援していきたい』というお話をいただきましたので、今日ただいま、鳩山前総理の前で、不肖の身でありますけれども、代表選に出馬する決意をいたしました。今後ともよろしくお願い致します。後で、今日は、ちょっと……」>

asahi.com - 鳩山前首相「小沢氏を応援するのが大義」(2010年8月26日11時0分)
http://www.asahi.com/politics/update/0826/TKY201008260100.html



<――小沢さんが出馬の意向を固めたと
 「うん。その通りです。昨日の菅総理との会談の模様をたずねられたので、私のほうから概要を申し上げました。その結果『それならば、民由合併の時からの同志としての協力が得られるならば出馬をしたい』というご意向を述べられたところであります」
 ――鳩山前総理が全面的に支持をする?
 「私は……、私の一存で、小沢先生には民主党に入って頂いたと。その経緯からして私としては応援をすると。それが大義だと思っています」
 ――これまでは菅総理支持だった。
 「常に、今政権として行動しておられる総理に対して、民主党の一議員として応援するのは当然だという意味で申し上げてきました」>

あいかわらず、天然なのか策略なのかわからない、八方美人的でふわふわした鳩山氏である。おそらく悪い人ではないと思うが、やはり一国の代表にはまったくふさわしくない人だったと思う。

asahi.com - 小沢氏出馬「最悪の事態」 菅首相支持議員に衝撃(2010年8月26日13時31分)
http://www.asahi.com/politics/update/0826/TKY201008260193.html


首相官邸に到着した菅直人首相=26日午前8時20分、飯塚悟撮影

<民主党の小沢一郎前幹事長の党代表選への立候補表明に、菅直人首相の再選を支持する議員らの間に26日、驚きと衝撃が広がった。
 仙谷由人官房長官は首相官邸で記者団に「全然聞いていない」。首相側近の荒井聰国家戦略相はうつむき加減で「びっくりしている」と語った。玄葉光一郎政策調査会長は「代表選より予算の方が大事だ」と平静さを装うが、ある省の政務三役の一人は「ガチンコ勝負になった。仕事にならない」と嘆いた>。

この「仕事にならない」というコメントがいい。大変なことが起きたという実感がこもっている。

<首相側近は「首相は完全にファイティングポーズだ。『この代表選は、民主党が本当の民主党になれるかの分水嶺(ぶんすいれい)だ』と思っている」と対決姿勢。菅首相を支える議員グループの若手衆院議員も「望むところだ。堂々と戦う。小沢氏と手を握った瞬間に菅氏は終わりだ」と息巻いた。別の側近議員は「3カ月前に責任をとって(幹事長を)辞めた人が立候補するというのはいかがなものか」と小沢氏を牽制(けんせい)した。
 ただ、小沢氏は党内最大勢力を率いるだけに、グループ内からは「最悪の事態だ。民主党崩壊の始まりだ」(ベテラン)と党分裂への懸念も出ている。首相周辺も「首相は負けないと思うが、心配なのはその後。小沢氏をどう処遇するか」と漏らした。
 首相支持を公言していた鳩山由紀夫前首相が一転して小沢氏支持を打ち出したことについて、寺田学首相補佐官は25日の首相と鳩山氏との会談に触れ「党運営で親身なアドバイスがあったようなので、意外に思う」と語った>。

党内の議員勢力でいうと小沢氏有利だとしても、党員レベルではわからないし、国民レベルではむしろ小沢氏が不利だろう。国民は票を入れるわけではないが、国民に人気のない小沢氏を代表に選べば民主党政権が危うくなる可能性もあるので、それが票の行方に影響するだろう。トータルに考えると、かなりいい勝負になるのではないか。

asahi.com - 野党側、小沢氏出馬に批判と警戒感(2010年8月26日13時31分)
http://www.asahi.com/politics/update/0826/TKY201008260220.html

<民主党代表選への小沢一郎前幹事長の出馬表明に、野党から反応が相次いだ。政治とカネの問題で幹事長を辞めたばかりの小沢氏の再登場を批判する一方で、菅直人首相との一騎打ちが民主党分裂、さらには政界再編のきっかけになるのではと身構えている。
 自民党の谷垣禎一総裁は26日午前、記者団に対し「参院選前に退いた方がまた挑戦するのはどういうことか」と批判。ただ、「どういう結論が出るか、かたずをのんで見守る」とも語った。
 ある党幹部は「民主党が分裂すれば政界再編だ。自民党がまとまれば主導権を握れる。引き締めないと」。別の党幹部は「権力闘争だから自民党もどうなるかわからん」と、政界の流動化が自民党に波及することを警戒する。
 社民党では小沢氏出馬への評価が割れた。福島瑞穂党首は「誰が代表でも是々非々で」と語ったが、ある党幹部は「政治とカネの問題で(幹事長を)辞めたばかりの人が首相になるのはあり得ない」。一方、別の党幹部は「いまの民主党政権は頭でっかちで何もできない。小沢さんしかいない」と述べた。
 たちあがれ日本の園田博之幹事長は、民主党代表選が政界再編の契機になることが「望ましい」と指摘した。新党改革の舛添要一代表は「小沢氏は首相になれば説明責任が出てくるので大変良い」と語った>。

この野党幹部の反応を伝えたニュースはおもしろい。誰も小沢出馬を予想していなくて、野党的なきびしいコメントを言いつつも、正直うろたえている感じだ。今後どうなるかはわからないが、少なくとも政界再編になるという見方ではおおむね一致しているようだ。私もそう思う。

asahi.com - 「決着いいこと」「亀裂深まる」小沢氏出馬に民主議員ら(2010年8月26日19時30分)
http://www.asahi.com/politics/update/0826/TKY201008260388.html

<次の首相を事実上決める民主党代表選に、小沢一郎・前幹事長が26日朝、立候補を表明した。自身をめぐる政治とカネの問題がくすぶり続ける中で、菅直人首相と全面対決する決断に、同党の国会議員らには衝撃が広がっている。一方、街では批判的な声が目立った>。

<「誰であっても代表選はやるべきだと思っていた。菅さんも小沢さんも、代表選を通じて政治理念を主張したらいいと思う」。滝実衆院議員(奈良2区)も、小沢氏の立候補を歓迎した。小沢氏の政治とカネの問題については「クロと決まったわけでない。代表への障害にはならない」。菅首相については「6月以降、やりたいことがよく見えない。参院選敗北についての責任についても説明がないと思う」と述べた。
 一方、官邸には同日午前、同党の1年生議員約10人が訪れ、菅首相に政策の要望を伝えた。その1人で1期目の花咲宏基衆院議員(比例中国)は「代表選で決着をつけることはいいことだ」と前向きに受け止めた。これまで小沢グループと菅首相支持派が対立し、党内が混迷気味だったと感じている。
 19日に鳩山由紀夫前首相の別荘で開かれた会合に小沢氏が参加すると、花咲議員の地元事務所には「小沢さんが首相になるなら党員を辞める」という電話が数本あった。支持者の9割は「小沢さんは政治とカネの問題を説明できていない」という意見のため、花咲議員は現時点では菅首相を支持する考えだという>。

この花咲議員の率直な発言は貴重だ。民主党内の議員が<小沢グループと菅首相支持派が対立し、党内が混迷気味だった>と感じているのだ。外から見てもそうだが、内部でもそうだったわけだ。やはり民主党はちゃんと分裂したほうがいい。

<「非常にまずい状況になってしまった。党内の亀裂が深まる」。テレビで小沢氏の立候補を知った小川敏夫参院議員(東京選挙区)は嘆いた。首相周辺のかたくなな「脱小沢」の姿勢が、小沢氏の決断を招いたと感じているという。「菅氏が勝っても小沢グループの協力が得にくくなり、政権運営は困難になる。小沢氏が当選すれば、政治とカネの問題で野党から集中砲火を浴びる。どちらが勝っても党は苦境に陥る」
 議員会館にいた高松和夫衆院議員(比例東北)も「国会運営や経済など色々と大変な時期なのに、どうして挙党態勢がとれなかったのか」と残念がった。「菅さんの方が譲るものは譲らないといけなかった。党内に150人もいる小沢さんのグループを敵に回して、どうするのか」
 岡本英子衆院議員(神奈川3区)は「党員・サポーターが入ってできる8年ぶりの党首選。無投票で決まるよりいい」。松浦大悟参院議員(秋田選挙区)は「古い政治に戻るのではなく、しっかりと政策を戦わせて欲しい」と話した>。

民主党内にも、分裂は困るという人と、しっかり戦うべきという人がいるようだ。実質は分裂しているのに、数の論理だけで無理にくっついて多数派を維持されても、国民が迷惑である。ぜひきちんと分裂してほしい。

先日のエントリでも書いたように、私は小沢氏について、「政治とカネ」とか「グレー」が問題だとは思わないが、「政策がよくわからない」のが問題だと思っている。

小沢氏は選挙のプロとして、おそらくたくさんの政治家を世話して当選させてきたのだろう。小沢氏はきっと、一般に思われているほどコワモテではなく、情にあつい人で、それゆえに小沢氏を「師」「恩人」と仰ぐ政治家が少なくないのであろう。それは私にもわかる。しかし、そういう「世話」「恩」に対して報いるというかたちで小沢氏を担ぐことは、政治家として正しい行動だろうか。小沢氏というのは、そのような互恵的関係、「つながり」によっていまの地位を得たのだろうと私には思える。その小沢氏が、民主党の代表選に出馬し、総理になる可能性も見えてきたわけだ。

国民に対して「政策」を直接訴えることをせずに、「世話」「恩」「つながり」によって、もし小沢氏が総理までのぼり詰めることができたら、それは日本という国が、そういう国だということの証明になるだろう。鳩山元総理は、小沢氏を支持することが「大義」だと語っているが、これは象徴的だと思う。

民主党の議員だけでなく、他の党の政治家にも、そして有権者にも、真に国民のためになる「政策」を理詰めで考えるというより、「世話」「恩」「つながり」のようなもので票を入れてしまう人が、少なからずいる。そういう「身内びいき」の姿勢が、日本をダメにしてきたのだ。政治で「身内びいき」をやることは、共謀して「国を私物化」することに等しい。

「政策」の観点で言えば、菅氏の打ち出す「政策」は間違っており、その意味では「小沢総理」になったほうが、日本がよくなる可能性はあると思う。しかし、菅氏は少なくとも「政策」を自分で理解しようとしており、かつそれを国民に対してつねに訴えている。私は菅氏の「政策」には賛同できないが、政治家としての姿勢は筋が通っており、まったく「やましさ」を感じない。

このように、私としては小沢氏と菅氏のどちらも支持できない感じで、複雑な思いがある。しかし少なくとも、両氏がガチンコで対決して、民主党が分裂し、政界再編が起きることは大歓迎だ。この気持ちは、ちょうど昨年の総選挙で、決して民主党の政策を支持するわけではないが、政権交代すること自体はいいと思ったという、あのときの感じに似ている。


関連エントリ:
民主代表選、小沢氏出馬論強まる 民主党は小沢派と反小沢派に早く分裂してほしい
http://mojix.org/2010/08/20/minshu-ozawa
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