2010.09.07
地方公務員の給与レベルはなぜ高いのか
産経ニュース - 論説委員・岩崎慶市 公務員改革の本丸は地方(2010.9.5 07:39)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100905/fnc1009050741000-n1.htm

<「増税の前に公務員改革」は政治の決まり文句となった。だが、先の参院選でも真っ最中の民主党代表選でもやり玉にあがるのは霞が関官僚だけで、はるかに優遇されている地方公務員が忘れられている。公務員改革の本丸はここにあるのに、なぜ政治は目を向けないのか>。

<地方公務員は公営企業を含めて300万人と、自衛隊を含めた国家公務員の5倍に上る。この膨大な地方公務員の高給与是正は、間違いなく公務員改革の本丸のはずだ。なのに、政治、特に民主党は代表選でも言及さえしない。自治労と日教組が強力な支持基盤だからだろう>。

<地方公務員の給与は住民税だけでなく、地方交付税によって支えられている。それが来年度予算の概算要求基準でも一律削減から外され、要求は今年度並みとなった。高給与を是正すれば交付税は簡単に削減できる。国民の厳しいチェックの目が必要だ>。

理屈としてはその通りだろう。国税(所得税、法人税、消費税など)の約3分の1が地方交付税になり、それが地方公務員への給与の財源になっているのだから、地方公務員の給与レベルは、国民全体の問題である。

ではなぜ、それが大きな問題になっていないのだろうか。この記事で指摘されているような、改革への抵抗が大きすぎて誰も着手したがらない、という側面はもちろん大きいだろう。しかしこの問題の場合、おそらくそれだけではない。地方で公務員の給料をもし民間レベルに下げたら、地方経済が壊滅しかねない、という暗黙の認識があるのではないだろうか。地方への公共事業と同様、一種のバラマキとして、この高い給与レベルが黙認されているのだと思える。国政レベルの認識としてはおそらくそれがあって、それゆえに、この問題がなるべく国民に騒がれないように、知らんぷりをしているのだろう。

しかし、その地方の住民からすれば、この不平等は明確である。地元の住民は、その公務員とじかに接するので、「なんでこんな仕事で、こんなに高い給料をもらえるんだ!?」と怒りが収まらないだろう。さらに、その高い給料の原資は、自分が払う住民税でもあるのだ。自分や家族が公務員でない人は、これでは到底納得できない。だから、ここにメスを入れる改革派の首長があちこちから出てきて、抵抗にあいながらも、住民に支持されているのだろう。

けっきょく、政府というものは「他人のカネ(税金)を使う」ことで成り立っているので、その「他人のカネ」がどのように配分されるかが、つねに問題になる。よって、この問題を根本的に解決するには、政府をできるだけ小さくして、「他人のカネを使う」ことができる余地をなるべく小さくするしかない。

民間の市場取引では、互いに合意した場合にしか取引が起こらず、他人に強制したり、他人から強奪することはできない。「他人のカネを使う」ことはできないのだ。これが普通であり、民間の常識だろう。政府というのは、その民間の常識が通用しない場所だ。だから問題が起きる。市場原理・競争原理がなければ、フリーライド(タダ乗り)が起きるのは必然である。これが既得権益になり、いちどそれをつかんだ者は絶対に手放そうとしない。

地方公務員の給与に話を絞ると、上述したような地方へのバラマキというのが隠れた意図だとすれば、この構造を抜本的に解決するには、本格的な地方分権をやるしかない。国税の約3分の1を地方交付税として渡すのではなく、税源自体をかなりの部分渡してしまって、「あとは自由にやれ」というふうにすべきだろう。

地方分権を進めて、地方に税源自体を渡せば、地方はそれを自由に使えるだけでなく、独自に税率を上げたり下げたりして、特色を出せる。地方に税源を渡して、それを地方が自由に使えるようになれば、地方公務員の給料を高くするか低くするかも、その地方の勝手である。ダメな地方からは住民や企業が流出して、他の地方に行くだろうから、地方間の競争が起きる。この競争原理による緊張感と自助努力によってこそ、地方は良くなるのだ。補助金やバラマキは地方をダメにする。

税源の大半を国がガッチリつかんでいて、そこから地方にバラマキするという日本の中央集権構造こそ、多くの問題の根源である。地方分権によってこれを解体しない限り、問題は解決しない。


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