2011.04.15
個人事業主を「保護」する最高裁の判決は、個人事業主の仕事を減らすだろう
asahi.com - 個人事業主でも「労働組合法上の労働者」 最高裁が判断 (2011年4月13日3時45分)
http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY201104120393.html

<住宅設備のメンテナンス会社と業務委託契約を結ぶ個人事業主は「労働組合法上の労働者」に当たるか。劇場側と個人として出演契約を結ぶ音楽家の場合はどうか。二つの訴訟の判決で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は12日、いずれも「労働者に当たる」との判断を示した>。

<企業が外注化を進め、個人事業主が急増する中で、判決は個人として働く人の権利を重視し、組合をつくって団体交渉する道を開いた。IT技術者やバイク便のドライバー、ピアノ教室や塾の講師など形式的には独立した事業主でも、働き方の実態によって労働者と認める先例となりそうだ>。

この最高裁の判決は、個人事業主を「保護」するものだ。だから一見すると、これは個人事業主にとって有利な判決に思えるかもしれない。しかし、実はその反対だ。

この判決によって、会社から見れば、個人事業主と仕事をする「コスト」が上がったことになる。よって、会社は個人事業主と仕事をするのをためらうようになるだろう。

つまりこの判決は、個人事業主の仕事を減らしてしまうのだ。

「保護」は取引のコストを上昇させ、取引を減らしてしまう。解雇規制が雇用を減らすのと同じ構造である。最高裁は、この「保護のコスト」をわかっているのだろうか。


関連エントリ:
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