2013.03.18
白川日銀総裁「景気が改善し需給がひっ迫することによって物価は上昇し、その逆ではない」
ロイター - 円安でも潜在成長率高まらず=最後の講演で白川日銀総裁(2013年03月17日 08:25)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92F00S20130316

<日銀は15日、白川方明総裁の任期中最後の講演となった2月28日の日本経団連での講演内容を公表した。白川総裁は、円安局面でも潜在成長率は高まらず多くの国民は単なる物価上昇を望んでいないと指摘し、緩やかなインフレを意図的に起こそうとするリフレ派の主張を改めてけん制した>。

<白川総裁は「実質GDP(国内総生産)の水準を持続可能なかたちで高めることがマクロ経済政策の重要な目標」と指摘。「景気が改善し需給がひっ迫することによって物価は上昇し、その逆ではない」「多くの国民は単に物価だけが上がることを望んでいる訳ではない」とし、拙速な金融緩和による物価上昇による実質所得の低下などの副作用を懸念した>。

いつもながら、この白川総裁の見方にまったく同感だ。物価が上がっても、給料がそれと同じくらい上がらないかぎり、実質所得は下がる。実質所得が下がるのに、お金を使うわけがない。

<また「ひとつの問題への対応に全力を挙げている時に、新たな問題や予想外の危機の種が蒔かれていたという例には事欠かない」と述べ、デフレ脱却のため新日銀が進めるとみられる大胆な金融緩和が新たなバブルを誘発する可能性について暗に懸念を示した>。

いまの株高は、すでに一種のプチバブルだと思える。円が下がりそうなので、株が買われているだけの話だろう。実体経済の成長を予測しての株高ではなく、現預金から株へという、アセットクラス(資産の種類)のあいだでの移動にすぎない。

ロイター - コラム:黒田日銀が直面する「市場の期待」という怪物=佐々木融氏(2013年03月15日 17:21)
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE92E04F20130315

<「金融緩和、構造改革、規制緩和を積極的に進める」という言葉は、表現は多少違っても、どの政権も口にしてきたことだ。しかし、安倍首相が前任者たちと違ったのは、「金融緩和、構造改革、規制緩和を積極的に進めた結果、インフレ率を2%にする」と結果を分かりやすい形で示した点である>。

<それゆえに、市場が結果を先取りしている。本来は、金融緩和、構造改革、規制緩和が進み、その結果、民間投資や消費が喚起され、需要が強くなる。そして、需要が強くなると、企業収益が増え、企業経営者が先行きの収益にも一定の自信を持てれば、雇用を増やし、労働市場がひっ迫すると雇用者所得が増加する。そうなると、自然に物価は上昇し始める>。

<通貨は物価の反対側の概念であるから、日本の物価が上昇を始めれば円安圧力が強まる。企業収益も増えるのだから、当然株価も上昇する。アベノミクスは物価上昇を明確に約束したので、「金融緩和、構造改革、規制緩和が進み・・・雇用者所得が増加する」というところまでも一括して約束したような効果があった。もちろん、それ自体が悪いことではない。良い結果を先に享受すること自体は問題ではないだろう。ただ、享受した後は、期待を実体に変えていかなければならない>。

この佐々木融氏の見方に、私も賛同する。「期待」を生み出すという点では、アベノミクスはいまのところ成功している。しかし、これは<市場が結果を先取りしている>面が大きく、期待がふくらみすぎているので、あとで失望したときの反動も大きくなる。

実体経済を伸ばすには、金融緩和や財政出動ではなく、構造改革・規制緩和をやるしかない。アベノミクスが真に成果を上げられるかどうかは、この本丸に斬り込めるかどうかにかかっている。


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