2009.03.16
ICTを軸にした日本経済再生案、「減らす改革」
アゴラbeta - ICTに「ニューディール」はいらない - 池田信夫
http://agora-web.jp/archives/507839.html

<家電や自動車などの輸出産業が打撃を受けている今、コンピュータと通信は数少ない成長産業なのに、この分野で世界に売れるものがほとんどないというのでは、日本経済はこれから何で食っていけばいいのでしょうか>。

<こうした状況について先月、総務省のICTビジョン懇談会は「ICTニューディール」という緊急提言を出しました。「ICT産業は経済成長の底上げのための強力な手段」であり、「ICT産業を新たな成長戦略の柱に位置付けるべき」だという総論には異論がありませんが、各論には問題があります。特に「政府は、現在100兆円弱の市場規模を2015年頃を目途に倍増させる(新規需要を創出する)ことを目指すべきである」という提言は、時代錯誤の産業政策といわざるをえない>。

その通りだと思う。産業を保護したり、無理に促進しようとすればするほど、その産業はむしろ弱くなる。

日本が世界でいちばん強いアニメ、マンガ、ゲームなどは、もっとも保護されていない産業だ。労働環境も悪く、いわば「もっともデタラメな業界」だろう。しかし、保護や干渉という「役所のお節介」を受けなかったからこそ、純粋に競争力を伸ばすことができたという面もある。

ほんとうにICT(情報・コミュニケーション技術)産業を伸ばしたいなら、ICTについては解雇規制などの雇用規制を緩和・撤廃し、法人税も大幅に減らすか、いっそなくせばいい。それだけで、ICTでの起業や新規参入、人材の移動、投資などが爆発的に増えるだろう。

「ICT産業は経済成長の底上げのための強力な手段」というのはその通りであって、ICTが強くなれば、全ての産業が恩恵を受ける。ICTが大きく伸びれば、それが日本経済全体を引っぱり上げてくれるのだ。

これは、いまや全ての産業がICTを使っており、ビジネス基盤・生産性向上の手段としてますます欠かせないものになっているというのもあるし、ICTの会社も会社である以上、事務所を必要とし、消耗品を使ったりするから、双方向にシナジーが生じるのだ。経済はつながっている。

そして人材の移動が活発になり、ICTでの労働需要が増せば、失業率も下がる。ICT産業に解雇規制がなくなれば、ICTの企業は気軽に正社員を採用できるようになるから、「属性弱者」にもチャンスが増える。社員もいま以上に気軽に転職できるようになるから、不満足な職場でガマンして働く必要もなくなる。 ICT産業が伸びれば、そこに勤める人の数も増え、給与レベルも上がっていくので、その人たちが日々使うお金が、日本経済を活性化していく。

池田氏は、<官庁は予算のつく事業には積極的ですが、権限の減る規制改革には後ろ向き>と書いている。私もその通りだと思う。日本は規制が多すぎ、税金が高すぎる。これからの官庁には、「増やす」のではなく「減らす」こと、「足す」のではなく「引く」こと、余計なことをするのではなく、余計なことをやめる、という方向が求められている。

「減らす」こと、「引く」ことには抵抗が強く、それを推進するには勇気がいるだろう。しかし、その「減らす改革」こそが、いまの日本に最も必要なものなのだ。「減らす」からこそ、新しいものが出てくる余地がそこに生まれる。


関連エントリ:
IT・ネット業界だけ、解雇規制を外してみるのはどうか
http://mojix.org/2009/01/31/it_net_kaikokisei
雇用規制撤廃と減税で日本経済は再生する
http://mojix.org/2008/05/28/revive_japan_economy