2009.10.02
「亀井モラトリアム」で日本の「金融社会主義」がさらに悪化すれば、世界標準市場の「土俵」から外れる
JBpress - 「亀井モラトリアム」の行き着く先 「金融社会主義」で財投拡大?(2009年10月01日 博雅)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1837

<江戸時代の老中、水野忠邦は「天保の改革」と呼ばれる大胆な政策を断行した。その1つに未払い債権を全て無利子とした上、元金も20年返済で強制分割払いと規定したモラトリアムがある。ところが、資金回収に懸念を抱いた金貸しが貸し渋り、救済されるはずの武士がさらに困窮するという皮肉な結果を招いた>。

<鳩山新政権下、亀井静香金融相が提唱した中小企業向け貸し出しのモラトリアムは、水野忠邦の政策に酷似している。日本でも過去には金融恐慌など非常時に限り、市場の混乱収束と決済業務の正常化を目的に短期間のモラトリアムが実施されているが、今回はそうしたものとは性格を異にする>。

<なぜなら、中小企業の資金繰り支援は所得再分配を目的とする財政の仕事であり、資本の効率的利用を目指す金融業の役目ではないためだ。手許に中小企業を助ける資金(=税金)がないから、それを民間資金で行うというのは明らかに「政府の都合」でしかない>。

<一般預金者が銀行に預けている資金の運用方法を政府が規定するならば、それは「金融社会主義」の極致である。そうした大きな思想的問題を別にしても、今回のモラトリアム構想は多くの危険をはらんでいる>。

この「博雅(Hiromasa)」という人の記事はいつも中身が濃くて、私は楽しみにしている。今回も素晴らしい内容だ。

亀井モラトリアム案は、水野忠邦の「天保の改革」と似た面がある、という冒頭の指摘に始まり、日本は「金融社会主義」的な傾向が強く、政府が民間資金の運用方法を規定しようとする亀井モラトリアム案はその極致である、といった指摘がある。

借金返済の猶予を政府が銀行に強制すれば、銀行はむしろ貸さなくなり、企業は逆に苦しくなる、といったあたり前の指摘に加えて、保証協会による保証や日銀の「モンスターオペ」など、すでに政府の金融支援はかなり行なわれており、これ以上の救済はもはや金融の仕事ではなく産業政策である、といった説明がある。亀井案は郵政民営化反対論と合わせて、「財投(財政投融資)拡大」という時代に逆行する方向に行くであろう、と予想されている。

私はこの記事を読んで、亀井金融相はとにかく「弱者救済のために国じゅうにカネをばらまきたい」という信念がまずあって、それを「財務相」でも「経産相」でもない「金融相」という自分の立場を使い、最大限に主張を通そうとした結果がモラトリアム案なのであろう、ということが理解できた。もし亀井金融相が日本の最高権力者であれば、日本はあっというまにジンバブエになるだろう。

亀井金融相は極悪人ではなく、苦しい中小企業への「友愛」の気持ちはわかるのだが、「すべてを自分が采配したい」独裁者タイプであることは間違いない。ジンバブエムガベだって、黒人の苦しい立場を良くしようという「友愛」の気持ちが強かったわけで、ムガベなりの「正義」を強行に押し通した結果、国をメチャクチャにしたのである。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉は、いくら亀井金融相やムガベのような「善意」があっても、間違ったことを強行すれば「地獄」行きだということを教えている。

「博雅」氏はこの記事の最後の部分で、日本はもともと「金融社会主義」的な傾向が強く、世界標準市場という「土俵」の瀬戸際、「徳俵」で踏み止まっている、という表現をしている。これ以上「金融社会主義」を強めれば、もう日本はマトモな「市場」ではなくなるわけだ。これは私が以前、「日本の問題は「市場の失敗」でなく「政府の失敗」」で書いた見方と同じだろう。日本は金融危機を受けて、世界的な動向にあわせて市場の規制を強める方向に動いたが、もともと日本は規制だらけで自由が不足しているので、これは日本経済を余計ひどくしてしまう。

具体的な規制や政治のレベルだけでなく、メディアや世論のレベルでも、小泉・竹中路線への過大なバッシングをはじめ、日本では「左傾化」が目立つようになってきた。日本にはもっと構造改革や規制緩和が必要なのに、構造改革や規制緩和が間違いであったかのように言われ、郵政再国有化に象徴される構造改革の逆行、規制強化、「大きな政府」化が進んでいる。私も「博雅」氏と同様、これ以上日本で「社会主義」化が進めば、世界標準市場という「土俵」から外れてしまうように思う。


関連:
MSN産経ニュース - 国民新が返済猶予に金利含める原案 亀井氏は「自分は福の神」(2009.10.1 12:21)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091001/stt0910011221009-n1.htm
<亀井氏は番組で、自らを日本経済を救う「福の神」になぞらえた上で、「私が金融庁の担当大臣になった以上、銀行に得手勝手な貸し渋りはやらせない」と強調。モラトリアム法案を臨時国会で成立させる決意を重ねて表明した>。

関連エントリ:
日本の雇用問題を解決するには、(1)規制緩和(2)規制強化(3)意識改革 のどれが有効か?
http://mojix.org/2009/09/30/koyou_kaiketsu_approach
亀井金融相のジンバブエ路線 地獄への道は「友愛」で敷き詰められているのか
http://mojix.org/2009/09/28/kamei_zimbabwe
「困っている人を救いたい」という気持ちは正しいが、それを「他人に強制する」のは間違いだ
http://mojix.org/2009/09/26/kyuusai_kyousei
日本の問題は「市場の失敗」でなく「政府の失敗」
http://mojix.org/2009/08/29/nihon_no_mondai