2010.08.11
解雇規制は「離婚禁止」のようなものだ
もし離婚が禁止されたら、どうなるだろうか?
結婚したら離婚できないとなれば、結婚するカップルは減るだろう。

誰だって、最初から離婚しようと思って結婚するわけではない。
しかし、離婚したいと思う局面がやってくる可能性はある。
そのときに離婚できないのであれば、結婚しないでおこうと考えても当然だろう。

解雇規制というのは、この「離婚禁止」に似ている。
会社は、人を採用したくないのではない。むしろ、いつでも採用したいのだ。
しかし、日本ではいったん採用すれば解雇がむずかしい。だから採用できないのだ。
半年や1年分の給料なら払えても、定年まで払いつづける余裕は普通ないだろう。

誰だって、解雇はイヤなものだ。会社側だって、解雇しなければならないのはツラい。
しかし、解雇がイヤだからって、解雇を禁止してしまっていいのか。
それは、離婚が望ましくないから、離婚を禁止するようなものだ。
企業に解雇をさせないようにしているから、企業は採用できないのだ。

もし解雇規制がなくなり、解雇が自由になれば、企業は大量にクビ切りを始めるだろうか?
まったくその反対である。いつでもクビを切れるなら、むしろ気軽に採用しはじめるのだ。
そして、いつでもクビを切れるなら、すぐにクビを切る必要もない。
経営者であれば、このように考えるはずだ。この経営のロジックをわかっていない人が多い。

解雇規制がある限り、要するに企業は人を採用できず、労働市場がまともに機能しない。
雇用が生まれず、起業も増えず、むしろ企業が海外に流出して、日本経済は沈みつづける。
こんなことは当たり前だと思うのだが、なぜ解雇規制が根本問題であるという認識が広まらないのだろうか。

企業に解雇を禁じておいて人を採用しろというのは、離婚を禁じておいて結婚しろと言っているのと同じだ。


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