法定通貨が信頼されるのはなぜか
昨年の1月に、こういう記事を書いた。
フェイスブックが仮想通貨を本格展開 ITプラットフォームは「経済圏」へ向かう
http://mojix.org/2011/01/28/facebook-money
<Facebookは世界最大のSNSとして、数億人の「ユーザアカウント」を握っている。自社の「通貨」を普及させるのに、これ以上有利なポジションにいる企業はないだろう。Googleですら、これに太刀打ちするのはおそらく容易でない>。
<GoogleやApple、FacebookのようにITプラットフォームを確立した企業は、そこで「決済」の仕組みを必要とするので、遅かれ早かれ「通貨」にまで向かうだろう。こうして、ITプラットフォームは「経済圏」へと進化していく>。
これに対して、はてなブックマークで次のようなコメントがあった。
<円天との違いは何だろう。通貨の価値を担保しているのは法を執行する国家権力であって,仮想通貨はその枠組みの上に成り立っている。対立するものという見方は間違い>(yoko-hiromさん)。
これを受けて、このコメントも紹介しつつ、補足する記事を書いた。
通貨の価値を担保しているものは何か
http://mojix.org/2011/02/25/tsuuka-kachi
<電子マネーや、店のポイントを持っている人は、何を信じて、それをサイフの中に持ちつづけているのだろうか。それがほんとうに「使える」と信じられるのは、どういう根拠によるのだろうか。こうした広い意味での「通貨」の価値を担保しているものは、「法を執行する国家権力」だろうか>。
<通常の場合、国家であれば信頼されるが、国家でも信頼されないこともある。ジンバブエでハイパーインフレが起きたのは、ジンバブエという国家が発行する通貨が、まったく信頼されなくなったからだ>。
<つまり、通貨の価値を担保しているものは、「発行体が国家である」ということではなく、やはり「発行体が信頼できる」ということなのだ。通常は、国家のほうが信頼されるという「程度の違い」があるだけで、価値を担保しているものが「法」ではなく、「信頼」であるという点では同じだ>。
これを受けて、yoko-hiromさんがフォロー記事を書いていたのを最近知った。
yoko-hiromの日記 - 法定通貨が信頼されるのはなぜか
http://d.hatena.ne.jp/yoko-hirom/20110227/1298776879
<先日,mojix.org さんの記事「フェイスブックが仮想通貨を本格展開 ITプラットフォームは「経済圏」へ向かう - モジログ」に対して,不躾な「はてなブックマーク」コメントをつけてしまいました。その上 mojix さんに追加の解説記事を書く手間を取らせてしまいました。mojix さんにお詫び申し上げるとともに,コメントを修正させて頂きます>。
私はこれまで、はてなブックマークで数えきれないくらい叩かれてきたが、こんなふうにきちんと詫びてもらったのはおそらく初めてだ。そもそも、yoko-hiromさんのコメントは特にひどい罵倒ということもなく、こんなにていねいに詫びてもらうと、むしろ申し訳ない気がする。
そのうえ、この記事の内容を読んでみれば、私の考えとかなり近いのだ。
<通貨の価値を担保しているのは信頼です。皆が価値あるものと信じているから価値がある。では皆が信頼できると考えるのはなぜでしょう。私は「法を執行する国家権力」に対する信頼が,その根拠だと考えます>。
<法定通貨は国家が法律で定めたもの。しかし「価値がある」と宣言しただけで価値が生まれるわけではありません。法を執行する実力が伴わなければ意味がない。平たく言えば警察力に代表される「暴力装置」ですね。「暴力装置」を背景にした権力があって,それを管理する国家が信頼されているとき,つまり法執行のためのみに「暴力装置」が使われているときに国家が信頼され,法定通貨に価値が生まれるというのが私の考えです>。
国家を支えているのは、結局のところ「暴力装置」つまり武力であるというのは、私も同感だ。武力だけで国家がうまくいくわけではないが、武力がなければ国家を支えられないだろう。私は右翼でなくリバタリアンのつもりだが、リバタリアンでも防衛・警察には国家の役割を認める人が少なくない。
yoko-hiromさんが「法定通貨」つまり国家による公式の通貨を重視するのは、国家でなければこの「暴力装置」を背景にした権力を持ちえないからだ。
その意味では、私も「法定通貨」の威力を軽視するものではない。しかし、yoko-hiromさんに比べると、私は企業によるポイントや「仮想通貨」の重要性をより高く評価していて、今後ますます存在感を増してくると考えている。
GoogleやApple、Facebookのような企業は、もはや経済規模においても、存在感においても、小国を超えていると思う。こうした企業が発行する「通貨」が、マイナーな法定通貨よりも「強く」なるという未来は、そう遠くない気がする。
関連エントリ:
通貨の価値を担保しているものは何か
http://mojix.org/2011/02/25/tsuuka-kachi
フェイスブックが仮想通貨を本格展開 ITプラットフォームは「経済圏」へ向かう
http://mojix.org/2011/01/28/facebook-money
企業が通貨を発行する時代 通貨という「プラットフォーム」
http://mojix.org/2010/01/04/company_money
フェイスブックが仮想通貨を本格展開 ITプラットフォームは「経済圏」へ向かう
http://mojix.org/2011/01/28/facebook-money
<Facebookは世界最大のSNSとして、数億人の「ユーザアカウント」を握っている。自社の「通貨」を普及させるのに、これ以上有利なポジションにいる企業はないだろう。Googleですら、これに太刀打ちするのはおそらく容易でない>。
<GoogleやApple、FacebookのようにITプラットフォームを確立した企業は、そこで「決済」の仕組みを必要とするので、遅かれ早かれ「通貨」にまで向かうだろう。こうして、ITプラットフォームは「経済圏」へと進化していく>。
これに対して、はてなブックマークで次のようなコメントがあった。
<円天との違いは何だろう。通貨の価値を担保しているのは法を執行する国家権力であって,仮想通貨はその枠組みの上に成り立っている。対立するものという見方は間違い>(yoko-hiromさん)。
これを受けて、このコメントも紹介しつつ、補足する記事を書いた。
通貨の価値を担保しているものは何か
http://mojix.org/2011/02/25/tsuuka-kachi
<電子マネーや、店のポイントを持っている人は、何を信じて、それをサイフの中に持ちつづけているのだろうか。それがほんとうに「使える」と信じられるのは、どういう根拠によるのだろうか。こうした広い意味での「通貨」の価値を担保しているものは、「法を執行する国家権力」だろうか>。
<通常の場合、国家であれば信頼されるが、国家でも信頼されないこともある。ジンバブエでハイパーインフレが起きたのは、ジンバブエという国家が発行する通貨が、まったく信頼されなくなったからだ>。
<つまり、通貨の価値を担保しているものは、「発行体が国家である」ということではなく、やはり「発行体が信頼できる」ということなのだ。通常は、国家のほうが信頼されるという「程度の違い」があるだけで、価値を担保しているものが「法」ではなく、「信頼」であるという点では同じだ>。
これを受けて、yoko-hiromさんがフォロー記事を書いていたのを最近知った。
yoko-hiromの日記 - 法定通貨が信頼されるのはなぜか
http://d.hatena.ne.jp/yoko-hirom/20110227/1298776879
<先日,mojix.org さんの記事「フェイスブックが仮想通貨を本格展開 ITプラットフォームは「経済圏」へ向かう - モジログ」に対して,不躾な「はてなブックマーク」コメントをつけてしまいました。その上 mojix さんに追加の解説記事を書く手間を取らせてしまいました。mojix さんにお詫び申し上げるとともに,コメントを修正させて頂きます>。
私はこれまで、はてなブックマークで数えきれないくらい叩かれてきたが、こんなふうにきちんと詫びてもらったのはおそらく初めてだ。そもそも、yoko-hiromさんのコメントは特にひどい罵倒ということもなく、こんなにていねいに詫びてもらうと、むしろ申し訳ない気がする。
そのうえ、この記事の内容を読んでみれば、私の考えとかなり近いのだ。
<通貨の価値を担保しているのは信頼です。皆が価値あるものと信じているから価値がある。では皆が信頼できると考えるのはなぜでしょう。私は「法を執行する国家権力」に対する信頼が,その根拠だと考えます>。
<法定通貨は国家が法律で定めたもの。しかし「価値がある」と宣言しただけで価値が生まれるわけではありません。法を執行する実力が伴わなければ意味がない。平たく言えば警察力に代表される「暴力装置」ですね。「暴力装置」を背景にした権力があって,それを管理する国家が信頼されているとき,つまり法執行のためのみに「暴力装置」が使われているときに国家が信頼され,法定通貨に価値が生まれるというのが私の考えです>。
国家を支えているのは、結局のところ「暴力装置」つまり武力であるというのは、私も同感だ。武力だけで国家がうまくいくわけではないが、武力がなければ国家を支えられないだろう。私は右翼でなくリバタリアンのつもりだが、リバタリアンでも防衛・警察には国家の役割を認める人が少なくない。
yoko-hiromさんが「法定通貨」つまり国家による公式の通貨を重視するのは、国家でなければこの「暴力装置」を背景にした権力を持ちえないからだ。
その意味では、私も「法定通貨」の威力を軽視するものではない。しかし、yoko-hiromさんに比べると、私は企業によるポイントや「仮想通貨」の重要性をより高く評価していて、今後ますます存在感を増してくると考えている。
GoogleやApple、Facebookのような企業は、もはや経済規模においても、存在感においても、小国を超えていると思う。こうした企業が発行する「通貨」が、マイナーな法定通貨よりも「強く」なるという未来は、そう遠くない気がする。
関連エントリ:
通貨の価値を担保しているものは何か
http://mojix.org/2011/02/25/tsuuka-kachi
フェイスブックが仮想通貨を本格展開 ITプラットフォームは「経済圏」へ向かう
http://mojix.org/2011/01/28/facebook-money
企業が通貨を発行する時代 通貨という「プラットフォーム」
http://mojix.org/2010/01/04/company_money