「40歳定年制」はどこがおかしいか
Business Media 誠 - 安易なリストラも? 突然浮上した「40歳定年」に賛否(2012/08/02 08:40)
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1208/02/news023.html
<政府の国家戦略会議が「40歳定年制」をぶち上げた。65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれている。[産経新聞]>
<政府の国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)フロンティア分科会が、7月6日にまとめた報告書で「40歳定年制」をぶち上げた。65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれる。雇用の流動化で労働生産性を高め、国家の衰退を防ぐ狙いというが、転職を支援する制度面の整備が進まなければ、安易なリストラの助長に終わる懸念もある>。
少し前に話題になっていた、この「40歳定年制」。ここにもあるように、たしかに唐突な感じだ。しかし、これがどういう趣旨で出てきたかはよくわかる。
当ブログでは何度も書いているように、私は解雇規制に反対で、解雇を自由化すべきと考えている。日本では解雇が困難なために、雇用が固定化してしまい、これがさまざまな弊害を引き起こしている。
同時に、私は定年制にも反対である。定年制というのは要するに年齢差別であって、それ以外の何者でもない。こんな差別がまかり通っている先進国は少ないだろう(アメリカでは定年がないのはもちろん、履歴書に年齢欄もないそうだ)。
日本の定年制は、終身雇用・解雇規制といわばセットになっている。もし定年がなかったら、会社は社員が死ぬまでクビにできないことになってしまう。それでは困るので、定年になったら辞めさせていいですよ、というのが定年制だ。つまり、「定年までは会社が面倒を見なさい」というのが日本の制度なのである。
記事中に、<65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれる>という一文があるが、これはよくわかる。65歳への定年延長は、雇用をいっそう強く保護する方向であり、年金給付を遅らせたいという意図もあるだろう。しかしこの方向では、雇用格差や若年者失業など、雇用の固定化によって生じているさまざまな問題をいっそう深めてしまう。それで、そういった問題を緩和するために「40歳定年制」という話が出てきたのであろう。
つまり「40歳定年制」というのは、雇用の流動化をめざすという基本的な方向では正しい。しかし「解雇の自由化」までは踏み切れないので、定年を40歳に繰り上げることで妥協しましょう、というあたりで落ち着いた話だと思える。「解雇の自由化」までは踏み切れず、「定年」という年齢差別も残したままなので、なんとも中途半端な、腰が引けた感じの案になってしまっている。
<「定年の延長は大反対。45歳ぐらいから自分の第2の人生を考えさせるべきだ」。3月に行われた同分科会のうち、経済成長のあり方などを議論する繁栄のフロンティア部会で、委員を務めるローソンの新浪剛史社長は力を込めた。
新浪社長自身は「55歳定年制」を提唱しているが、その言葉の裏には、政府の方針通りに定年が65歳に延長されれば、若い人の雇用機会がますます減ってしまうという危機感がある>。
新浪社長の危機感は私も共有するが、45歳ぐらいから第2の人生とか、55歳で定年とか、大きなお世話だし、自由にさせてくれと思う。
こういう、「人生の標準型」みたいなものを政府が決めて、それを制度化して国民に押しつけるというやり方が、そもそもおかしいのだ。戦後からいままでずっと続いている、この手の「挙国一致」体制こそが、日本の根本的な問題なのである。これを脱却しなければ、日本は次のステップに進めない。
関連エントリ:
イタリアで労働市場改革法案が可決、解雇が容易に 「仕事を守る」のではなく「人を守る」
http://mojix.org/2012/07/08/italy-kaiko
失敗できない日本
http://mojix.org/2010/03/07/shippai_dekinai
定年制という「高齢者排除の論理」が要請される理由
http://mojix.org/2010/02/04/teinen_logic
定年制に反対する
http://mojix.org/2009/03/28/anti_teinen
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1208/02/news023.html
<政府の国家戦略会議が「40歳定年制」をぶち上げた。65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれている。[産経新聞]>
<政府の国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)フロンティア分科会が、7月6日にまとめた報告書で「40歳定年制」をぶち上げた。65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれる。雇用の流動化で労働生産性を高め、国家の衰退を防ぐ狙いというが、転職を支援する制度面の整備が進まなければ、安易なリストラの助長に終わる懸念もある>。
少し前に話題になっていた、この「40歳定年制」。ここにもあるように、たしかに唐突な感じだ。しかし、これがどういう趣旨で出てきたかはよくわかる。
当ブログでは何度も書いているように、私は解雇規制に反対で、解雇を自由化すべきと考えている。日本では解雇が困難なために、雇用が固定化してしまい、これがさまざまな弊害を引き起こしている。
同時に、私は定年制にも反対である。定年制というのは要するに年齢差別であって、それ以外の何者でもない。こんな差別がまかり通っている先進国は少ないだろう(アメリカでは定年がないのはもちろん、履歴書に年齢欄もないそうだ)。
日本の定年制は、終身雇用・解雇規制といわばセットになっている。もし定年がなかったら、会社は社員が死ぬまでクビにできないことになってしまう。それでは困るので、定年になったら辞めさせていいですよ、というのが定年制だ。つまり、「定年までは会社が面倒を見なさい」というのが日本の制度なのである。
記事中に、<65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれる>という一文があるが、これはよくわかる。65歳への定年延長は、雇用をいっそう強く保護する方向であり、年金給付を遅らせたいという意図もあるだろう。しかしこの方向では、雇用格差や若年者失業など、雇用の固定化によって生じているさまざまな問題をいっそう深めてしまう。それで、そういった問題を緩和するために「40歳定年制」という話が出てきたのであろう。
つまり「40歳定年制」というのは、雇用の流動化をめざすという基本的な方向では正しい。しかし「解雇の自由化」までは踏み切れないので、定年を40歳に繰り上げることで妥協しましょう、というあたりで落ち着いた話だと思える。「解雇の自由化」までは踏み切れず、「定年」という年齢差別も残したままなので、なんとも中途半端な、腰が引けた感じの案になってしまっている。
<「定年の延長は大反対。45歳ぐらいから自分の第2の人生を考えさせるべきだ」。3月に行われた同分科会のうち、経済成長のあり方などを議論する繁栄のフロンティア部会で、委員を務めるローソンの新浪剛史社長は力を込めた。
新浪社長自身は「55歳定年制」を提唱しているが、その言葉の裏には、政府の方針通りに定年が65歳に延長されれば、若い人の雇用機会がますます減ってしまうという危機感がある>。
新浪社長の危機感は私も共有するが、45歳ぐらいから第2の人生とか、55歳で定年とか、大きなお世話だし、自由にさせてくれと思う。
こういう、「人生の標準型」みたいなものを政府が決めて、それを制度化して国民に押しつけるというやり方が、そもそもおかしいのだ。戦後からいままでずっと続いている、この手の「挙国一致」体制こそが、日本の根本的な問題なのである。これを脱却しなければ、日本は次のステップに進めない。
関連エントリ:
イタリアで労働市場改革法案が可決、解雇が容易に 「仕事を守る」のではなく「人を守る」
http://mojix.org/2012/07/08/italy-kaiko
失敗できない日本
http://mojix.org/2010/03/07/shippai_dekinai
定年制という「高齢者排除の論理」が要請される理由
http://mojix.org/2010/02/04/teinen_logic
定年制に反対する
http://mojix.org/2009/03/28/anti_teinen