パソナは「セーフティネット」である 「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える」
日経ネット - パソナ、今春卒業予定の大学生就業支援
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20100316ATDD160CI16032010.html
<パソナグループは16日、今春卒業予定の大学生の就業を支援する取り組みを始めた。無料研修を実施し、希望者をパソナの契約社員として雇用したうえで顧客企業に派遣する。大学生の就職内定率が低迷するなか、就職の見通しが立たなかった学生が働きながら職場を探せるようにする。今後1年間で2000人規模の研修実施を目指す。
学生に31.5時間の研修を受けてもらい、文章の書き方や電話応対、名刺交換の作法など基本マナーを教える。職種や業界別のセミナーも開き、社会人としての基礎知識を身につけられる内容にする。
研修後、希望者はパソナの契約社員として最長2年間雇用する。参加者は契約社員として働くのと並行して「営業」「経理」といった職種ごとの専門知識を身につける研修も受けられる>。
政府がどんどん雇用規制を強めているので、企業はますます正社員採用がむずかしくなり、派遣への需要はますます高まっている。いっぽう、採用が決まらない新卒がますます増えて、人材が余っている。
パソナはこの状況をうまく「利用」しているわけで、ビジネス的には当然の発想だろう。需要がたくさんあるところに行き、その需要をごっそり拾うのだ。企業からの派遣需要が高まっていて、いっぽう派遣になれる人材が増えているのだから、それをマッチングすれば儲かるに決まっている。
しかし、これから政府が製造業派遣だけでなく、派遣そのものを全面禁止してくるかもしれない。亀井大臣による郵政の「全員正社員化」と同様、民間にも「採用は正社員でなければダメだ!」という強引な押しつけをしてくる可能性はあると思う。
そうなれば、企業は正社員採用をますます減らして、今度は外注の形態が増えるだろう。すると、「請負」「受託」がまたビジネスチャンスになる。
政府が企業への規制を強めれば強めるほど、企業はそこから逃げ出すだけだ。正社員の採用コストが上がれば上がるほど、正社員採用は減るに決まっている。これは経済学の「法則」であり、あらかじめわかっていることだ。政府がこの「法則」を理解するまで、この追いかけっこは続く。そろそろ、ジンバブエの背中が見えてくる頃じゃないか?
正社員採用を「強制」するのでなく、解雇も含めて完全に「自由」にしたほうが、むしろ正社員採用は増えるのだ。この理屈は経済学者でなくても、経営や人事の経験がある人なら、おそらく誰でもわかるだろう。
今回のパソナの動きを見て、「小泉・竹中路線が格差を拡大した」という俗論を信じているような人は、きっと腹が立つだろう(竹中平蔵氏は現在パソナグループの取締役会長なので、なおさらだ)。しかし、ここでパソナが果たしている役割こそ、実は「セーフティネット」そのものだと思う。
職がない人にただカネを渡しても、その人は永遠に職につけない。生活保護やアフリカへの援助が、問題を根本的に解決できないのと同じだ。なぜ職がないのか、なぜカネがないのか、という根本原因(「構造」)を取り除かなければ、問題はなくならない。
今回のパソナの試みは、就職できない新卒を契約社員で雇い、研修したり現場で働かせて経験をつけさせ、給料も払うというものだ。職がない人を「売れる人材」に変えていくわけで、「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える」というやつだ。これこそ真のセーフティネットである。
関連:
YOMIURI ONLINE - 日本郵政、非正規の半数10万人を正社員に
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100317-OYT1T00572.htm
金融日記 - 非正規社員とか派遣社員とかってみんなコンサルタントって呼べばいいんじゃない?
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51670063.html
関連エントリ:
労働者は「労働サービス」の提供者であり、その意味では「経営者」である
http://mojix.org/2010/03/18/worker_service_provider
「派遣禁止なら正社員雇う」企業は14% 派遣禁止は「幸福が望ましいから不幸を禁止する」ようなもの
http://mojix.org/2009/12/09/haken_kinshi_seishain
アンソニー・ギデンズ「急速に社会が変化している時代には、『仕事』を守るのではなく、『人』を守らなければならない」
http://mojix.org/2009/06/18/giddens_shigoto
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20100316ATDD160CI16032010.html
<パソナグループは16日、今春卒業予定の大学生の就業を支援する取り組みを始めた。無料研修を実施し、希望者をパソナの契約社員として雇用したうえで顧客企業に派遣する。大学生の就職内定率が低迷するなか、就職の見通しが立たなかった学生が働きながら職場を探せるようにする。今後1年間で2000人規模の研修実施を目指す。
学生に31.5時間の研修を受けてもらい、文章の書き方や電話応対、名刺交換の作法など基本マナーを教える。職種や業界別のセミナーも開き、社会人としての基礎知識を身につけられる内容にする。
研修後、希望者はパソナの契約社員として最長2年間雇用する。参加者は契約社員として働くのと並行して「営業」「経理」といった職種ごとの専門知識を身につける研修も受けられる>。
政府がどんどん雇用規制を強めているので、企業はますます正社員採用がむずかしくなり、派遣への需要はますます高まっている。いっぽう、採用が決まらない新卒がますます増えて、人材が余っている。
パソナはこの状況をうまく「利用」しているわけで、ビジネス的には当然の発想だろう。需要がたくさんあるところに行き、その需要をごっそり拾うのだ。企業からの派遣需要が高まっていて、いっぽう派遣になれる人材が増えているのだから、それをマッチングすれば儲かるに決まっている。
しかし、これから政府が製造業派遣だけでなく、派遣そのものを全面禁止してくるかもしれない。亀井大臣による郵政の「全員正社員化」と同様、民間にも「採用は正社員でなければダメだ!」という強引な押しつけをしてくる可能性はあると思う。
そうなれば、企業は正社員採用をますます減らして、今度は外注の形態が増えるだろう。すると、「請負」「受託」がまたビジネスチャンスになる。
政府が企業への規制を強めれば強めるほど、企業はそこから逃げ出すだけだ。正社員の採用コストが上がれば上がるほど、正社員採用は減るに決まっている。これは経済学の「法則」であり、あらかじめわかっていることだ。政府がこの「法則」を理解するまで、この追いかけっこは続く。そろそろ、ジンバブエの背中が見えてくる頃じゃないか?
正社員採用を「強制」するのでなく、解雇も含めて完全に「自由」にしたほうが、むしろ正社員採用は増えるのだ。この理屈は経済学者でなくても、経営や人事の経験がある人なら、おそらく誰でもわかるだろう。
今回のパソナの動きを見て、「小泉・竹中路線が格差を拡大した」という俗論を信じているような人は、きっと腹が立つだろう(竹中平蔵氏は現在パソナグループの取締役会長なので、なおさらだ)。しかし、ここでパソナが果たしている役割こそ、実は「セーフティネット」そのものだと思う。
職がない人にただカネを渡しても、その人は永遠に職につけない。生活保護やアフリカへの援助が、問題を根本的に解決できないのと同じだ。なぜ職がないのか、なぜカネがないのか、という根本原因(「構造」)を取り除かなければ、問題はなくならない。
今回のパソナの試みは、就職できない新卒を契約社員で雇い、研修したり現場で働かせて経験をつけさせ、給料も払うというものだ。職がない人を「売れる人材」に変えていくわけで、「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える」というやつだ。これこそ真のセーフティネットである。
関連:
YOMIURI ONLINE - 日本郵政、非正規の半数10万人を正社員に
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100317-OYT1T00572.htm
金融日記 - 非正規社員とか派遣社員とかってみんなコンサルタントって呼べばいいんじゃない?
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51670063.html
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労働者は「労働サービス」の提供者であり、その意味では「経営者」である
http://mojix.org/2010/03/18/worker_service_provider
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http://mojix.org/2009/12/09/haken_kinshi_seishain
アンソニー・ギデンズ「急速に社会が変化している時代には、『仕事』を守るのではなく、『人』を守らなければならない」
http://mojix.org/2009/06/18/giddens_shigoto