自由市場経済がいいと思う人の割合:日本は約4割、中国やインドは約8割
金融そして時々山 - 中国79%、日本41%
http://kitanotabibito.blog.ocn.ne.jp/kinyuu/2010/05/post_86b7.html
<「中国で79%、日本で41%、インドで81%、米国で76%」これが何の数字か分かりますか?分かれば敬服します。私は見当もつかなかったので。
これは「自由市場経済は人々の暮らしに良い」と考えている人の割合(Pew Research CenterのAre people better off in a free market economy?という調査結果による)
この調査によると自由市場経済は暮らしに良いと考える人の比率で日本はアルゼンチンについて2番目に低い(アルゼンチンは36%)>。
<何故日本ではこれ程自由主義経済が暮らしに良いと考える人が少ないのだろうか?この調査は2009年に行われたものだが、リーマンショック前の2007年の調査を見ても、日本人は49%の人しか自由市場経済は暮らしに良いと回答していない(下から数えて7番目)>。
<その原因が何であるか私には分からない。表向きは共産主義の旗を掲げている中国で8割近い人が自由市場経済は暮らしに良いと答え、表向きは世界第2の資本主義国である日本で4割の人だけが自由市場経済は暮らし向きに良いと答えることに違和感を覚えるのみである>。
ここで言及されている調査は、以下のもののようだ。
Pew Global Attitudes Project - Views of the Free Market
Are people better off in a free market economy?
http://pewglobal.org/database/?indicator=18
ケニヤ(Kenya) 84%
パレスチナ(Palestinian ter.) 82%
インド(India) 81%
中国(China) 79%
韓国(South Korea) 76%
アメリカ(United States) 76%
イスラエル(Israel) 72%
イギリス(Britain) 66%
カナダ(Canada) 66%
ナイジェリア(Nigeria) 66%
ブラジル(Brazil) 65%
パキスタン(Pakistan) 65%
ポーランド(Poland) 65%
レバノン(Lebanon) 64%
ドイツ(Germany) 61%
エジプト(Egypt) 60%
トルコ(Turkey) 60%
フランス(France) 57%
スペイン(Spain) 57%
ヨルダン(Jordan) 54%
メキシコ(Mexico) 52%
ロシア(Russia) 51%
インドネシア(Indonesia) 49%
日本(Japan) 41%
アルゼンチン(Argentina) 36%
まさに、日本はアルゼンチンに次いで下から2番目である。インド、中国、韓国、アメリカなどは8割近辺で、ドイツ、フランスなども6割近辺、ロシアも約5割で、日本は約4割だ。
北欧などは調査対象に入っていないようだが、おそらくドイツ・フランス辺りとそう大きく違わないだろう。日本が先進国で最下位レベルなのは間違いない。
元ページのグラフで国名のところをクリックすると、各国ごとのページになり、調査年による推移がみられる(例:日本のページ)。ここに、調査に使った質問文と集計方法が書かれており、次のようにある(日本語は私による大意)。
Full question wording: Please tell me whether you completely agree, mostly agree, mostly disagree or completely disagree with the following statements: Most people are better off in a free market economy, even though some people are rich and some are poor.
質問文の全体:次の質問に、「完全に同意(completely agree)」「ほぼ同意(mostly agree)」「ほぼ不同意(mostly disagree)」「完全に不同意(completely disagree)」のいずれかで答えてください。「たとえ金持ちな人と貧乏な人が出てくるとしても、自由市場経済のもとで、大部分の人は暮らしがよくなる」
Notes: Agree combines "completely agree" and "mostly agree" responses. Disagree combines "mostly disagree" and "completely disagree."
注:「同意(Agree)」は、「完全に同意(completely agree)」と「ほぼ同意(mostly agree)」をあわせたもの。「不同意(Disagree)」は、「ほぼ不同意(mostly disagree)」と「完全に不同意(completely disagree)」をあわせたもの。
この同じ質問と集計方法を各国でおこない、「同意(Agree)」の数値を出したのが上のグラフだ。
ちなみに「不同意(Disagree)」の数値も各国ごとに見られる(例:日本のページ)。「同意(Agree)」と「不同意(Disagree)」を足すと97~99%程度になるので、未回答や無効回答は1~3%程度らしい。日本でよくありがちな「中間」「どちらでもない」という回答が許されていない状況で、日本は「不同意(Disagree)」がやはり半分以上という結果になっている。自由市場経済に同意しない人がほんとうに半数以上のようだ。
たしかに日本にはこういう傾向があるとは思っていたが、ここまでひどい数字だとは衝撃である。市場や競争をワルモノ扱いするマスコミの影響が大きいのだろうか。
国民が自由市場経済を信じていないと、自由な市場経済を規制する政策が支持されてしまい、社会主義的な計画経済に近づいていく。規制を増やせば増やすほど、より望ましい状態になるというのがこの考え方だ。いまの日本はまさにこの状況にある。
しかし日本人の場合、政府があらゆる資源配分をトップダウンで決める計画経済に、心底賛成しているようにも見えないのだ。大竹文雄氏が言うように、「市場も政府も信用していない」というのが、日本人の実際の心情にいちばん近い気がする。
「市場も政府も信用していない」というのは、市場と政府の役割、その補完関係を理解していないという無知から来る「ないものねだり」だろう。日本の政治では「小さな政府」と「大きな政府」という基本的な対立軸が鮮明でなく、方向感に欠けるのも、そもそも市場と政府の役割が理解されていないというのが大きそうだ。だから、政策の良し悪しでなく「いい人」「悪い人」という属人論法やワルモノ論、「頑張りが足りない」という精神論になりやすい。
あるいは、何に対しても否定やネガティブ評価から入り、マイナスの側面ばかり見る「危機感駆動型」カルチャーが原因かもしれない。市場も企業もワルモノだし、政治家も官僚もワルモノ。市場も政府も否定しておきながら、「ではどうするのか?」という具体策は持っていないのだ。
関連エントリ:
リチャード・カッツ「反成長的な慣行を社会的なセーフティネットと所得配分政策に置き換えよ」
http://mojix.org/2010/01/13/hanseichou_safetynet
日本の問題は「市場の失敗」でなく「政府の失敗」
http://mojix.org/2009/08/29/nihon_no_mondai
アメリカ人は「希望駆動型」、日本人は「危機感駆動型」
http://mojix.org/2009/07/31/us_kibou_jp_kiki
http://kitanotabibito.blog.ocn.ne.jp/kinyuu/2010/05/post_86b7.html
<「中国で79%、日本で41%、インドで81%、米国で76%」これが何の数字か分かりますか?分かれば敬服します。私は見当もつかなかったので。
これは「自由市場経済は人々の暮らしに良い」と考えている人の割合(Pew Research CenterのAre people better off in a free market economy?という調査結果による)
この調査によると自由市場経済は暮らしに良いと考える人の比率で日本はアルゼンチンについて2番目に低い(アルゼンチンは36%)>。
<何故日本ではこれ程自由主義経済が暮らしに良いと考える人が少ないのだろうか?この調査は2009年に行われたものだが、リーマンショック前の2007年の調査を見ても、日本人は49%の人しか自由市場経済は暮らしに良いと回答していない(下から数えて7番目)>。
<その原因が何であるか私には分からない。表向きは共産主義の旗を掲げている中国で8割近い人が自由市場経済は暮らしに良いと答え、表向きは世界第2の資本主義国である日本で4割の人だけが自由市場経済は暮らし向きに良いと答えることに違和感を覚えるのみである>。
ここで言及されている調査は、以下のもののようだ。
Pew Global Attitudes Project - Views of the Free Market
Are people better off in a free market economy?
http://pewglobal.org/database/?indicator=18
ケニヤ(Kenya) 84%
パレスチナ(Palestinian ter.) 82%
インド(India) 81%
中国(China) 79%
韓国(South Korea) 76%
アメリカ(United States) 76%
イスラエル(Israel) 72%
イギリス(Britain) 66%
カナダ(Canada) 66%
ナイジェリア(Nigeria) 66%
ブラジル(Brazil) 65%
パキスタン(Pakistan) 65%
ポーランド(Poland) 65%
レバノン(Lebanon) 64%
ドイツ(Germany) 61%
エジプト(Egypt) 60%
トルコ(Turkey) 60%
フランス(France) 57%
スペイン(Spain) 57%
ヨルダン(Jordan) 54%
メキシコ(Mexico) 52%
ロシア(Russia) 51%
インドネシア(Indonesia) 49%
日本(Japan) 41%
アルゼンチン(Argentina) 36%
まさに、日本はアルゼンチンに次いで下から2番目である。インド、中国、韓国、アメリカなどは8割近辺で、ドイツ、フランスなども6割近辺、ロシアも約5割で、日本は約4割だ。
北欧などは調査対象に入っていないようだが、おそらくドイツ・フランス辺りとそう大きく違わないだろう。日本が先進国で最下位レベルなのは間違いない。
元ページのグラフで国名のところをクリックすると、各国ごとのページになり、調査年による推移がみられる(例:日本のページ)。ここに、調査に使った質問文と集計方法が書かれており、次のようにある(日本語は私による大意)。
Full question wording: Please tell me whether you completely agree, mostly agree, mostly disagree or completely disagree with the following statements: Most people are better off in a free market economy, even though some people are rich and some are poor.
質問文の全体:次の質問に、「完全に同意(completely agree)」「ほぼ同意(mostly agree)」「ほぼ不同意(mostly disagree)」「完全に不同意(completely disagree)」のいずれかで答えてください。「たとえ金持ちな人と貧乏な人が出てくるとしても、自由市場経済のもとで、大部分の人は暮らしがよくなる」
Notes: Agree combines "completely agree" and "mostly agree" responses. Disagree combines "mostly disagree" and "completely disagree."
注:「同意(Agree)」は、「完全に同意(completely agree)」と「ほぼ同意(mostly agree)」をあわせたもの。「不同意(Disagree)」は、「ほぼ不同意(mostly disagree)」と「完全に不同意(completely disagree)」をあわせたもの。
この同じ質問と集計方法を各国でおこない、「同意(Agree)」の数値を出したのが上のグラフだ。
ちなみに「不同意(Disagree)」の数値も各国ごとに見られる(例:日本のページ)。「同意(Agree)」と「不同意(Disagree)」を足すと97~99%程度になるので、未回答や無効回答は1~3%程度らしい。日本でよくありがちな「中間」「どちらでもない」という回答が許されていない状況で、日本は「不同意(Disagree)」がやはり半分以上という結果になっている。自由市場経済に同意しない人がほんとうに半数以上のようだ。
たしかに日本にはこういう傾向があるとは思っていたが、ここまでひどい数字だとは衝撃である。市場や競争をワルモノ扱いするマスコミの影響が大きいのだろうか。
国民が自由市場経済を信じていないと、自由な市場経済を規制する政策が支持されてしまい、社会主義的な計画経済に近づいていく。規制を増やせば増やすほど、より望ましい状態になるというのがこの考え方だ。いまの日本はまさにこの状況にある。
しかし日本人の場合、政府があらゆる資源配分をトップダウンで決める計画経済に、心底賛成しているようにも見えないのだ。大竹文雄氏が言うように、「市場も政府も信用していない」というのが、日本人の実際の心情にいちばん近い気がする。
「市場も政府も信用していない」というのは、市場と政府の役割、その補完関係を理解していないという無知から来る「ないものねだり」だろう。日本の政治では「小さな政府」と「大きな政府」という基本的な対立軸が鮮明でなく、方向感に欠けるのも、そもそも市場と政府の役割が理解されていないというのが大きそうだ。だから、政策の良し悪しでなく「いい人」「悪い人」という属人論法やワルモノ論、「頑張りが足りない」という精神論になりやすい。
あるいは、何に対しても否定やネガティブ評価から入り、マイナスの側面ばかり見る「危機感駆動型」カルチャーが原因かもしれない。市場も企業もワルモノだし、政治家も官僚もワルモノ。市場も政府も否定しておきながら、「ではどうするのか?」という具体策は持っていないのだ。
関連エントリ:
リチャード・カッツ「反成長的な慣行を社会的なセーフティネットと所得配分政策に置き換えよ」
http://mojix.org/2010/01/13/hanseichou_safetynet
日本の問題は「市場の失敗」でなく「政府の失敗」
http://mojix.org/2009/08/29/nihon_no_mondai
アメリカ人は「希望駆動型」、日本人は「危機感駆動型」
http://mojix.org/2009/07/31/us_kibou_jp_kiki