2012.08.05
改正労働契約法が成立 勤続5年で無期限雇用を義務づけ
日本経済新聞 - 改正労働契約法、勤続5年で無期限雇用 パート待遇改善へ道(2012/8/3 23:37)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0303C_T00C12A8EE8000/

<同じ職場で5年を超えて働いているパートや契約社員を対象に、本人が希望すれば無期限の雇用への切り替えを企業に義務づける改正労働契約法が3日、成立した。正社員との理不尽な待遇格差の改善に道が開けたが、パートが戦力となっている製造業や小売業などには負担増にもなる。企業側がパートの契約更新に慎重になるおそれもあり、運用には課題も多い>。

<労働基準法は1回の雇用契約を原則3年以内と定めているが、何度も契約を結んだ場合の雇用ルールはこれまでなかった。契約更新を繰り返し、5年を超えて同じ職場で働いたパートや契約社員は企業から突然雇い止めされる不安がなくなる>。

<改正法は2013年度中に施行される見通し。施行後にパートや契約社員、派遣社員が結んだり、更新したりした契約が対象になる。施行直後に雇われた人の勤務期間が5年を超える18年度から影響が広がりそうだ>。

5年以上連続してパートや契約社員を雇いつづける場合は、無期限雇用(いわゆる正社員)にしなければいけない、という改正労働契約法が成立した。

そもそもパートや契約社員の存在意義は、正社員よりも安く雇うことができ、かついつでも契約を終了できる、というのが大きい。それを「5年以上連続して雇う場合は、正社員にしなければいけない」と強制すれば、どうなるか。

5年以内に切られる、というのは火を見るより明らかだ。この改正労働契約法によって、いまパートや契約社員で働いている人は5年以内に、大部分がクビになるだろう。パートや契約社員で働く当事者には大迷惑だし、きっと深刻なことになる。

日本では正社員を解雇するのがむずかしく、「定年までは、会社が面倒を見なさい」という制度になっている。これは要するに、社会保障の役割を会社に負わせているのであり、いわば「会社をセーフティネット化」しているわけだ。これによって、会社は正社員を雇うことを回避するようになり、これが雇用を固定化して、雇用格差や若年者失業などの問題が生じている。今回の改正労働契約法は、この「定年までは、会社が面倒を見なさい」という「会社のセーフティネット化」をいっそう強化するものだ。

雇用というものは、労働力を売買する市場取引である。いくら正社員が望ましいといっても、こんなふうに政府がムリヤリ市場取引に介入し、制約を増やせば、会社側の取引コストを上昇させて、市場取引=雇用が減るだけだ。これは経済学的にも自明だし、経営者や採用担当者にとっても自明である。

そもそも、「会社をセーフティネット化」している現状の制度設計がおかしいのだ。セーフティネット=弱者救済というものは、本来は政府の役割である。これを会社に押しつけているから、会社はそれを回避しようとして、雇用が減ってしまうのだ。セーフティネットは必要だが、市場を規制してもセーフティネットにはならない


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