2012.12.31
2012年をふりかえる
部屋のあちこちに本やCDが床積みになっていてウンザリしたので、バンカーズボックス佐藤可士和が使っていて有名になった、オシャレ系ダンボール箱)をたくさん買って、ひたすら入れてみた。すると今度は、部屋がバンカーズボックスで埋め尽くされ、まるでこれから引越しするような感じになってしまった。

そんな状態で迎える、2012年の大晦日。今年は、東日本大震災と原発事故があった昨年ほどではないにしても、尖閣や竹島の問題があったり、維新ブームで政界再編が起きて、衆院選で自公が政権に返り咲くなど、いろいろあった1年だった。

当ブログは、昨年後半くらいから更新が遅れがちになり、昨年の大晦日のエントリで少し書いたように、今年は無理に更新をせず、不定期更新にすることにした。すると、あっというまに半年もブログを休んでしまった。これでは永遠に書けないぞと思って、6月30日にブログを再開して、また毎日書くようにした。すると今度は、ちゃんと更新できるようになった。私は筋金入りのナマケモノなので、「無理やり」毎日書くことに決めないと、書けないことがよくわかった(関連:「ブログを毎日更新するメリット」)。

今年もはてなブックマークの人気エントリ機能を借りて、本ブログで人気を集めたエントリをふりかえってみたい。

1. 黒を使うな (2012.8.28)
http://mojix.org/2012/08/28/never-use-black
2. エンジニアにスーツを着せているIT会社 (2012.11.10)
http://mojix.org/2012/11/10/engineer-suit-company
3. アルツハイマー患者用の「バス停」 (2012.8.26)
http://mojix.org/2012/08/26/alzheimer-bus-stop
4. 菅直人前首相は、考え方は賛同できないが、人間としては信頼できる (2012.12.2)
http://mojix.org/2012/12/02/kan-trust
5. Pythonでデザインパターン (2012.8.10)
http://mojix.org/2012/08/10/python-patterns
6. 静的サイト生成という「古くて新しい手法」の復活 (2012.12.7)
http://mojix.org/2012/12/07/static-site-generation
7. 法律はソースコードに似ている (2012.12.22)
http://mojix.org/2012/12/22/law-source-code
8. 日本人は部屋全体を明るくしすぎる (2012.8.29)
http://mojix.org/2012/08/29/nihonjin-shoumei
9. ニートと起業家は似ている (2012.7.6)
http://mojix.org/2012/07/06/neet-kigyou
10. シュールリアリズム小説「みんな、維新やめるってよ」 (2012.11.27)
http://mojix.org/2012/11/27/novel-minna

3.の「アルツハイマー患者用の「バス停」」は、ツイッターの反響ではこれが最大だった(関連:「アルツハイマー患者用の「バス停」:補足」)。心にひびいて、人に伝えたくなる話だと思う。

4.の「菅直人前首相は、考え方は賛同できないが、人間としては信頼できる」は、賛否両論の大きな反響があった。このエントリは、菅氏について書いていると同時に、人間についての私の考え方を書いたものだ。補足の「「信頼できる人」とはどういう人か」とあわせて、読んでみてほしい。

6.の「静的サイト生成という「古くて新しい手法」の復活」は、わりとマニアックな内容なのに、予想以上に反響があった。私は2000年にZopeと出会っていらい、CMS(コンテンツ管理システム)というテーマを10年以上追いつづけているが、いまだに決定的なソリューションに至っていない。CMSの基盤となるアプリケーションサーバやデータベースのレベルでも、技術がつねに変化し、揺れつづけているので、無理もないかもしれない。技術は今後も発展し、揺れつづける。よって、CMSのようなソリューションのキモは、いかにシンプル化して複雑さを減らし、システムを構成している部品どうしを疎結合にするか、というところにあると思う。これはシステムの作り方としてはあたりまえの、「基本」の考え方だろう。「静的サイト生成」という手法の復活も、シンプル化・疎結合という「基本」に帰ろう、という動きのひとつだと私は捉えている。

10.の「シュールリアリズム小説「みんな、維新やめるってよ」」は、第三極のめまぐるしい動きに着想を得て、わりとテキトーに書いた(笑)。このあとの生活、未来、みどりの動きは、ご存知の通りである。かんたんにくっつく人は、かんたんに離れるものだろう。

あまりブログに書けなかった、個人的な興味の動きとしては、こんなものがあった。

1. クラシック熱が冷める
2. 美術展ブーム
3. オブジェクト指向再入門

1. クラシック熱が冷める

昨年までのクラシック熱がついに冷めて、今年はR&Bやテクノ、ヒップホップ、ロックなど、また雑多なものを聴くスタイルに戻った。私の音楽趣味はもともと雑多なので、これが本来のポジションだろう。昨年までの数年で、自分の雑多な音楽趣味のなかに「クラシックの場所」が確保されたことは間違いないので、いずれまたクラシックも聴きたくなるだろう。

私が聴くのは旧譜が大部分だが、わりとあたらしいものでは、リアーナ、DJ Diamond、Ital Tekなどをよく聴いた。リアーナはいまやR&Bの頂点という感じで、リアーナっぽい音も氾濫しているようだが、やはり本家リアーナが断然カッコいい。DJ Diamondは、シカゴのJuke/Footworkシーン(足を中心にした高速ダンスと、そこで使われる高速のビート・ミュージック)の若手。ライヒみたいにミニマルなのだが、ヒップホップやハウスのようなグルーヴがちゃんとある。斬新なだけでなく、音楽的に緻密な仕上がりで、長く聴ける。私の知っているもので言うと、Todd TerryA Guy Called GeraldPal JoeyTodd Edwardsなど、サンプリングでグルーヴを作り出す魔術師の系譜だ。Ital Tekはテクノ(?)の若手。最近のビートを基調にしつつも、1992-1993年頃のCarl CraigBlack Dog ProductionsKenny LarkinKirk DegiorgioDan Curtinなどに近い感触がある。私にとっては、テクノに没入していたあの頃を思い出させてくれる音だ。

2. 美術展ブーム

今年はわりと美術展に行った。覚えているものでは、『ドビュッシー、音楽と美術』(ブリヂストン美術館)、『ベルリン国立美術館展』(国立西洋美術館)、『マウリッツハイス美術館展』(東京都美術館)、『レーピン展』(Bunkamura ザ・ミュージアム)、『シャルダン展 静寂の巨匠』(三菱一号館美術館)など。私は大学の頃(20年以上前)から、現代美術は好きだったのだが、19世紀以前の「ただの絵」はずっと興味がなかった。しかしここ数年は、むしろ「ただの絵」のほうに興味をもっている。今年見たなかでは、『シャルダン展 静寂の巨匠』がいちばんよかった。シャルダンは18世紀フランスの画家で、静物画の巨匠として知られている(関連:「18世紀フランスの画家、ジャン・シメオン・シャルダンの静物画」)。この展示は、日本でのまとまったシャルダン展としては最初で最後(?)になるかもしれない、とのこと。たしかに、こんなに地味でマニアックな企画がよく実現したものだと思う。1月6日(日)までなので、見に行ける人はぜひ。

3. オブジェクト指向再入門

ベックの『実装パターン』を読んで、私はデザインパターン以前に、そもそもオブジェクト指向というもの自体、わかっていなかったことに気づかされた。「何をクラスにすべきか」ということが、これほど深遠なテーマだったとは。数あるデザインパターンも、「何をクラスにすべきか」という基本テーマをさまざまに変奏したもの、というふうにも見なせると思う。

今年はiPhone 5も買って、スマホの使用頻度も増えた。まだそれほど使い込んではいないが、いつもスマホを持ち歩くことで、少しずつ自分の世界観が変わってきていると感じる。

今年、仕事やプライベートでお世話になった方々、このブログを読んでくださった方々、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

どうぞよいお年を。


関連エントリ:
2012年をふりかえるには、ウィキペディアの「2012年の日本」ページが便利
http://mojix.org/2012/12/24/2012nen-japan
2011年をふりかえる
http://mojix.org/2011/12/31/furikaeru-2011