2009.12.31
2009年をふりかえる
昨年は金融危機が起こったが、今年は政権交代があった。昨年に続いて、あとからふりかえったときに大きな節目になりそうな年だったと思う。

鳩山政権への支持率は半分を割ったそうだが、それでも政権交代が起きたのはよかった、と考えている人が多いらしい。私も同感だ。私は総選挙前から民主党の政策に疑問を持ち鳩山政権が発足して以降もますます疑問を持ちつづけてきたが、それでも政権交代が起きたこと自体は良かったと思っている。総選挙とそれに続く政権交代を通じて、政治への関心が高まり、政治について自分なりに考える人が増えたことは間違いないだろう。鳩山政権がどうなるにせよ、日本国民が政治について考えるようになれば、長い目で見れば日本の政治はきっと良くなっていくと思う。

今年はまた、2000年から2009年までの「00年代」の最後の年でもあった。個人的には、この10年というのはほぼ「ITとビジネス」に集中した10年だった。予備校教師とライターの掛け持ちから、IT業界に転じたのが1999年。その翌年の2000年はじめに、PythonとZopeをほぼ同時に発見し、それにのめり込んでいった。それから現在に至るまでのちょうど10年間、私は仕事でも趣味でも、PythonとZopeを使い続けている。2000年にPythonとZopeに出会えたことは、ほんとうに幸運だったんだとあらためて感じる

昨年につづき、はてなブックマークの人気エントリ機能を借りて、今年書いたエントリのうちはてなブックマークで人気があったもののベスト10を振り返ってみよう。

1. アメリカ人は「希望駆動型」、日本人は「危機感駆動型」(2009.7.31)
http://mojix.org/2009/07/31/us_kibou_jp_kiki
2. 日本の賃貸住宅ではなぜ保証人を要求されるのか 「保護」がむしろ「弱者」を生む日本の構造(2009.4.2)
http://mojix.org/2009/04/02/chintai_hoshounin
3. 竹中平蔵vs菅直人 「現実が変わった」ことを受け入れられない日本(2009.12.17)
http://mojix.org/2009/12/17/takenaka_kan
4. 梅田望夫進化論(2009.6.8)
http://mojix.org/2009/06/08/umeda_shinkaron
5. 中川秀直「非正規雇用の方を切り捨てて守ろうとしているのは、経営者の利益だけではなく、実は正規雇用の方の雇用であり賃金です」(2009.7.20)
http://mojix.org/2009/07/20/nakagawa_koyou
6. なぜ日本ではブラック会社が淘汰されないのか 日本は雇用の流動性が低いから、労働者の価値が低い(2009.7.9)
http://mojix.org/2009/07/09/why_black_company
7. 「弱者をダシに使って、自分がカネや権力を得る」というビジネスモデル(2009.10.4)
http://mojix.org/2009/10/04/jakusha_dashi_business
8. 解雇規制という「間違った正義」(2009.1.20)
http://mojix.org/2009/01/20/kaikokisei_wrong_justice
9. 「主観恐怖症」の日本(2009.10.11)
http://mojix.org/2009/10/11/shukan_kyoufu
10. セブンイレブンを擁護する 「強者か弱者か」ではなく「公正(フェア)かどうか」で判断すべき(2009.8.14)
http://mojix.org/2009/08/14/seven_fairness

昨年のものに比べると、雇用問題など政治ネタの割合が増えている。これは私自身がこの系統のネタを書く頻度が上がっているのもあるし、総選挙や政権交代などの影響で、雇用問題への関心が高まっているのもありそうだ。雇用は日本経済の中心問題なので、政治がこれに正面から取り組まない限り、日本の「行き詰まり」感は打開できないだろう。雇用規制の改革を含まない「成長戦略」はありえないと思う。

今年も本やCDをたくさん買ったが、それに占める新刊・新作の割合は年々減っている気がする。今年はベスト10などをメモっておくのをサボってしまったので、覚えているものだけになるが、いくつか挙げてみるとこんな感じだ。

・ブラック・スワン(上・下)(ナシーム・ニコラス・タレブ)
・「多様な意見」はなぜ正しいのか(スコット・ペイジ)
選挙の経済学(ブライアン・カプラン)
ミクロ経済学Ⅱ(八田達夫)
「アイデア」333号 エミール・ルーダー特集

どれもまだきちんと読めていないのだが、良い本であることは間違いない。特にタレブの『ブラック・スワン』は、内容がいいだけでなく、広い教養に支えられたその型破りなスタイルが印象的だった。その「思想」のスケールの大きさとエンターテイナーぶりは、バックミンスター・フラーやマクルーハンなどに通じるものがあると思う。

CDについては、おそらく買ったものの8割くらいはクラシックで、あとはロックの旧譜などが多く、今年出たものというのは本当に思い出せない。唯一覚えているのは、田部京子『吉松隆:プレイアデス舞曲集』のリマスタリング版だ。この田部京子『吉松隆:プレイアデス舞曲集』は、おそらく私がもっともたくさん聴いているクラシック作品で、殿堂入りの1枚。シフの『平均律クラヴィーア曲集』などと並び、私をクラシックに深入りさせた作品のひとつだ。

今年は3Dをきっかけに、アートへの興味が10数年ぶりに戻ってきた年でもあったし、小説や映画への興味も久々に戻ってきた。歴史への興味も増していて、世界史への苦手意識もなくなり、むしろ好きになった。私の軸足はあいかわらずITとビジネスにあり、政治や経済、社会への関心も強いのだが、自分の中で「人文系への回帰」が起きていることは間違いない。

このブログは昨年の3月から毎日更新を続けてきて、今年は1日1日から12月31日まで、毎日更新した初めての年になった。実際はCMSの公開予約機能を使って、事前に書いておいたりもしているのだが、ともあれ毎日更新できた。毎日何か書くという「セルフ・トレーニング」は、たしかにシンドイ面もあるのだが、あとから振り返れば「自分観察日記」が残ることになるので、積み立て貯金みたいなものかもしれない。

今年、仕事やプライベートでお世話になった方々、このブログを読んでくださった方々、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

どうぞよいお年を。